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フレックスタイム制の仕組みと導入手順|人事担当者が押さえるべき実務ポイント

フレックスタイム制の仕組みと導入手順|人事担当者が押さえるべき実務ポイント
この記事を読んでわかること
  • フレックスタイム制の基本的な仕組みと種類(コアタイムあり・フルフレックス)
  • 厚生労働省調査から読む導入率の実態と、企業規模別の格差
  • 導入に必要な法的手続き(就業規則変更・労使協定・労基署届出)の全ステップ
  • コアタイム・清算期間・フレキシブルタイムの設計ポイント
  • 残業時間の算出方法と36協定上の留意点
  • 導入後に生じやすいトラブルと、勤怠管理システム活用による解決策

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フレックスタイム制は働き方改革を背景に関心が高まる一方、「仕組みが複雑」「導入後の勤怠管理が煩雑になった」という声も絶えません。

本記事では、基本的な仕組みから就業規則・労使協定の整備手順、残業計算、現場で生じやすい疑問への回答まで、人事・労務担当者が実務で必要な知識を体系的に解説します。

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フレックスタイム制の基本的な仕組み

制度の定義

フレックスタイム制とは、一定の清算期間における総労働時間をあらかじめ定めたうえで、従業員が日々の始業・終業時刻および1日の労働時間を自ら決定できる制度です(労働基準法第32条の3)。通常の固定時間制とは根本的に考え方が異なり、清算期間という一定の期間内で合計の労働時間さえ満たせば、日々の働き方を従業員自身が柔軟に設計できます。

急な予定や家庭の事情にも対応しやすく、育児・介護との両立やワークライフバランス改善に有効とされています。企業側にとっても、離職率の低下や生産性向上が期待でき、採用競争力の強化にもつながります。

導入率と企業規模別の実態

厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、フレックスタイム制を採用している企業の割合は全体の8.3%(令和6年調査7.2%)です。企業規模別に見ると、30〜99人規模と1,000人以上では約7倍の開きがあります。制度の複雑さや運用負荷が中小企業にとっての導入障壁になっており、システムによる勤怠管理の自動化がこの格差を縮める現実的な手段の一つです。

企業規模

フレックスタイム制 採用企業割合

1,000人以上

34.5%

300〜999人

22.6%

100〜299人

11.5%

30〜99人

4.9%

全体

8.3%

※出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第8表

関連用語:コアタイム・フレキシブルタイム・清算期間

フレックスタイム制の理解に欠かせない3つの用語を整理します。

用語

内容

清算期間

総労働時間を算出する基準期間(最長3か月)

コアタイム

全員が必ず出勤しなければならない時間帯(任意設定)

フレキシブルタイム

従業員が自由に出退勤できる時間帯

コアタイムは設置が必須ではありません。コアタイムを設けない運用は「フルフレックス(スーパーフレックス)」と呼ばれます。コアタイムを設けることで会議や打ち合わせのスケジュール調整がしやすくなりますが、設定時間が長すぎると実質的に固定時間制と変わらなくなり、フレックスタイム制の意義が薄れてしまいます。たとえば「9時〜18時をコアタイムとする」といった設定は、フレックスタイム制と認められない可能性があるため注意が必要です。

コアタイムは曜日ごとに異なる時間帯を設定することも可能です。全体朝礼のある月曜日だけコアタイムを早めにする、といった柔軟な設計も労使協定で定めれば認められます。

コアタイムとフレキシブルタイムの設定例

コアタイム

フレキシブルタイム

10時〜16時

7時〜10時、16時〜20時

なお、コアタイムを設定する際は、労働基準法第34条が定める休憩時間(労働時間6時間超で45分、8時間超で1時間)を確保できるよう設計することも必要です。

法改正で広がった清算期間の選択肢

2019年の働き方改革関連法施行以前、清算期間は1か月以内に限られていました。法改正後は最長3か月まで設定が可能となり、繁忙期・閑散期にまたがって労働時間を柔軟に調整できるようになりました。清算期間を長くするほど運用の自由度は高まりますが、残業計算が複雑になるというトレードオフもあります。

参考:労働基準法

清算期間中の総労働時間と法定総枠

総労働時間(所定労働時間)の設定

清算期間における総労働時間とは、労働契約上、従業員が働くべき時間数のことです(所定労働時間とも呼ばれます)。この時間は法定労働時間の上限内で設定しなければならず、以下の計算式で算出します。

法定労働時間の総枠 = 週40時間 × 清算期間の暦日数 ÷ 7

※週44時間の特例が認められる事業場(常時10人未満の一部業種)は44時間を使用します。

清算期間ごとの具体的な法定総枠は以下のとおりです。

1か月フレックスの場合

暦日数

法定労働時間の総枠

31日

40 ÷ 7 × 31 = 177.1時間

30日

40 ÷ 7 × 30 = 171.4時間

29日

40 ÷ 7 × 29 = 165.7時間

28日

40 ÷ 7 × 28 = 160.0時間

3か月フレックスの場合(代表例)

暦日数

法定労働時間の総枠

92日(31日+31日+30日)

40 ÷ 7 × 92 = 525.7時間

91日(31日+30日+30日)

40 ÷ 7 × 91 = 520.0時間

90日(30日+30日+30日)

40 ÷ 7 × 90 = 514.2時間

法定総枠の特例(1か月・完全週休2日制の場合)

1か月フレックスかつ完全週休2日制を実施している事業場については、「8時間×所定労働日数」を法定総枠時間とすることも認められています。土日を休みにして平日8時間働くと、月の暦日数によっては通常の計算式による総枠を超えてしまうケースがあるため、この特例が設けられています。

暦日数

総枠特例(最大所定労働日数の場合)

31日

23日 × 8時間 = 184時間

30日

22日 × 8時間 = 176時間

29日

21日 × 8時間 = 168時間

28日

20日 × 8時間 = 160時間

実務上は「総労働時間=法定総枠時間」と設定しているケースも多く、その場合はこの計算自体が不要になります。

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フレックスタイム制の導入手順

フレックスタイム制を適法に運用するには、就業規則の変更、労使協定の締結、必要に応じた労働基準監督署への届出という手続きを正しく踏む必要があります。

STEP1|就業規則への明記

最初のステップは就業規則への記載です。「始業時刻および終業時刻の決定を従業員の自主的判断に委ねる」旨を明記します。ここで重要なのは、始業・終業の両方を従業員に委ねる旨を記載しなければならないという点です(労働基準法第32条の3第1項)。片方だけを委ねる記載では要件を満たしません。

就業規則を変更した場合、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、所轄の労働基準監督署への届出が義務となります(労働基準法第89条)。この届出は清算期間の長さにかかわらず必要です。なお、10人未満の事業場でも就業規則の整備・変更は推奨されますが、届出義務は生じません。

STEP2|労使協定の締結

就業規則の整備と並行して、以下の事項を定めた労使協定を締結します(労働基準法第32条の3第1項各号)。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 清算期間(最長3か月)
  • 清算期間中の総労働時間
  • 標準となる1日の労働時間
  • コアタイムを設ける場合:その開始・終了時刻
  • フレキシブルタイムに制限を設ける場合:その時間帯

フレックスタイム制の対象者は、全労働者を対象とするか、特定の部署・職種・グループ・個人単位で限定するかを自由に選択できます。また、正社員・契約社員・パート・アルバイトといった雇用形態を問わず、企業側が対象範囲を設定できます。この対象範囲は労使協定に記載する必要があります。ただし、満18歳未満の年少者にはフレックスタイム制を適用できません(労働基準法第60条第1項)。

締結相手は、事業場に過半数労働組合がある場合はその組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者です。

STEP3|労働基準監督署への届出

清算期間が1か月を超える場合は、締結した労使協定を所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません(労働基準法第32条の3第4項)。清算期間が1か月以内であれば届出は不要です。

届出書類は「フレックスタイム制に関する協定届」(様式第3号の3)を使用します。制度運用開始前に余裕をもって準備しましょう。

STEP4|従業員への周知と勤怠管理体制の整備

制度の目的・ルール・清算期間の計算方法など、具体的な内容を従業員に丁寧に説明することが定着の鍵となります。説明会やFAQドキュメントの整備も有効です。

また、出退勤時刻が人によって異なるため、個々の労働時間を正確に把握・集計できる勤怠管理の仕組みを整えることが不可欠です。手作業での集計は誤りが生じやすく、残業の見落としや36協定違反のリスクが高まります。システムを活用した自動集計の導入が、安定した運用の前提となります。

参考:フレックスタイム制 のわかりやすい解説 & 導入の手引き|厚生労働省

残業の扱い・時間外計算・36協定との関係

フレックスタイム制における「残業」の基本的な考え方

フレックスタイム制では、「1日8時間を超えたか」ではなく、「清算期間中の法定労働時間の総枠を超えたか」で時間外労働を判定します。1日8時間・1週40時間を超えてもただちに時間外が発生するわけではなく、清算期間全体での総労働時間を基準に判断する点が固定時間制と大きく異なります。

ただし、深夜(22時〜翌5時)に労働した場合の深夜割増賃金、および法定休日に労働した場合の休日割増賃金は、フレックスタイム制においても通常どおり適用されます。また、有給休暇の取得時間は時間外計算の対象に含まれません。

所定労働時間の超過と法定総枠の関係

清算期間終了時に実際の労働時間が総労働時間(所定労働時間)を上回った場合、その超過部分の取り扱いは2段階で考えます。

総労働時間を超えていても、法定労働時間の総枠の範囲内であれば、割増賃金の支払いは原則として不要です(ただし、就業規則で割増を定めている場合は支払いが必要です)。

労働契約上の時間は超えているため、通常の時間単価での賃金支払いは必要となります。法定総枠を超えた部分については、割増賃金の対象となります。

清算期間が複数月の場合の残業計算(2段階チェック)

清算期間を2か月または3か月とした場合、残業の算出が2段階になります。

まず、各月ごとに「週平均50時間を超えた時間」が時間外労働として計上されます(労働基準法第32条の3の2)。これは清算期間終了を待たずに、毎月発生する可能性があります。

次に、清算期間終了時に、清算期間全体の実労働時間から法定総枠と各月計上済みの時間外を差し引いた残りを集計します。計算式は以下のとおりです。

清算期間終了時の時間外労働時間 = 清算期間の実労働時間 − 各月の週平均50時間超計上分 − 法定労働時間の総枠

この2段階の計算を正確に行うには、勤怠管理システムによる自動集計が現実的な対応策です。

月60時間超の時間外労働に対する割増率

1か月の法定時間外労働が60時間を超えた場合、超えた部分には50%以上の割増賃金が必要です(労働基準法第37条第1項ただし書)。2023年4月からは中小企業にも適用されており、フレックスタイム制を問わず対象となります。なお、この60時間のカウントに法定休日の労働時間は含まれません。

36協定との関係と上限規制

フレックスタイム制を採用していても、36協定の締結・届出は必要です。時間外労働の上限規制(原則として月45時間・年360時間)も同様に適用されます。特別条項を設ける場合でも、以下の条件を満たす必要があります。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計について、2か月〜6か月の平均がすべて月80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えられるのは年6か月が限度

フレックスタイム制で36協定の上限管理を行う際に対象となる時間外労働は、①各月に計上した週平均50時間超過分と、②清算期間終了時に計上する法定総枠超過分の合計です。清算期間の設計と36協定の内容が整合しているかを事前に確認することが欠かせません。

参考:労働基準法

不足時間の繰り越し・途中退職時の精算

不足時間が生じた場合の処理

清算期間終了時に実際の労働時間が所定労働時間に満たなかった場合、以下の2つの方法から処理を選択します。

不足時間を賃金から控除する(欠勤控除) ②不足時間を翌清算期間に繰り越し、翌期間の所定労働時間に加算する

②を選択した場合、繰り越した不足時間を加えた翌清算期間の所定労働時間が、翌清算期間の法定総枠を超えてはなりません。この上限を超えると法令違反となるため注意が必要です。いずれの処理方法を採用するかは、就業規則・労使協定に事前に明示しておくことが必要です。

途中退職した場合の精算

清算期間の途中で退職した場合は、在職期間を基に精算を行います。退職時に実際の労働時間が所定労働時間を下回っていれば賃金控除、上回っていれば割増賃金を含む適切な賃金を支払います。割増賃金の対象となるのは、在職期間において週平均40時間を超えた時間分です(労働基準法第32条の3の2)。

よくある現場の疑問Q&A

フレックスタイム制を運用する現場では、制度の解釈をめぐって細かな判断を迫られる場面が多くあります。実務でよく挙がる疑問をまとめました。

Q1. 月曜日だけ始業時刻を指定することはできますか?

始業時刻を会社が一方的に指定することはできません。全員参加の朝礼を設けたい場合は、その時間帯をコアタイムに含めて運用してください。フレックスタイム制の前提は「始業・終業の両方を労働者が決定できること」であり、これを損なう運用は制度の趣旨に反します。

Q2. コアタイムを曜日によって変えることはできますか?

可能です。たとえば月曜日は全体朝礼があるため10時〜15時、火曜日以降は11時〜15時とするなど、曜日ごとに設定を変えることができます。ただし、コアタイムの設定内容は労使協定に明記する必要があります。

Q3. コアタイム外の打ち合わせに出席命令を出してもよいですか?

コアタイム以外の時間に出勤を強制することはフレックスタイム制の趣旨に反するため、避けるべきです。外部との商談など出席が不可欠な打ち合わせは、コアタイム内で日程調整できるよう運用ルールで工夫しましょう。

Q4. フレキシブルタイムを超えて働くことはできますか?

フレキシブルタイムの範囲内で働くのが原則です。従業員の実際の勤務実態を把握したうえで、フレキシブルタイムの範囲を適切に設定することが重要です。

Q5. 深夜に出勤・退勤した場合も割増賃金は必要ですか?

フレックスタイム制でも深夜割増(22時〜翌5時)は適用されます。コアタイムの開始時間を遅く設定すると、必然的に深夜残業が発生しやすくなるため、従業員の通常の勤務時間を考慮してコアタイムを設計することをお勧めします。

Q6. どのような運用だとフレックスタイム制と認められませんか?

フレックスタイム制と認められるためには、労働者が自由に出退勤時刻を決定できる運用であることが必要です。始業・終業時刻が実質的に一律固定されている場合や、コアタイムが「9時〜18時」のように1日の所定労働時間をほぼカバーしている場合は、フレックスタイム制とは認められません。

Q7. フレックスタイム制でも有給休暇は取得できますか?

取得できます。有給休暇取得日は、労使協定で定めた「標準となる1日の労働時間」を働いたものとして扱います。これにより、有給取得日も清算期間の所定労働時間にカウントされます。

WorkOnでフレックスタイム制の運用負担を解消する

フレックスタイム制は制度設計だけでなく、導入後の継続運用にこそ課題が潜んでいます。出退勤時刻が人によって異なる中で、法定総枠の計算・週平均50時間超のチェック・清算期間終了時の残業集計・36協定上限の監視を手作業で行うことは、現実的に限界があります。特に担当者が少ない中小・中堅企業では、月末の集計業務が大きな負担になりがちです。

WorkOnは、こうした人事・労務担当者の実務課題を、AIと一体化した勤怠管理で解決します。

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