産休(産前産後休業)は労働基準法で定められた制度であり、会社側には複数の手続き義務が発生します。さらに、2025年には育児・介護休業法の改正が2段階で施行され、企業に求められる対応の範囲が広がっています。
本記事では、産前・産後それぞれの期間のルールから、企業が行うべき手続きとスケジュール、最新の法改正ポイントまで、実務に直結する情報を整理しました。産休の基本から2025年改正への対応まで、人事担当者が知っておくべき情報をすべて網羅しています。

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本記事では、産前・産後それぞれの期間のルールから、企業が行うべき手続きとスケジュール、最新の法改正ポイントまで、実務に直結する情報を整理しました。産休の基本から2025年改正への対応まで、人事担当者が知っておくべき情報をすべて網羅しています。

目次
産休とは「産前産後休業」の略称で、労働基準法第65条を根拠とする休業制度です。正式には、出産予定日前の「産前休業」と出産後の「産後休業」の2つを合わせた期間を指します。
この制度には2つの目的があります。第一に、出産前後の母体を保護すること。第二に、女性労働者の就業継続を支援することです。制度の存在は広く知られていますが、「育休(育児休業)」と混同されることがあります。産休は労働基準法に基づく母体保護のための休業であり、産後の期間は会社が強制的に付与しなければならないものです。一方、育休は育児・介護休業法に基づく制度で、子どもを育てるために取得するものです。産休終了後に育休へ移行するのが一般的ですが、別々の法律・別々の制度である点を正しく理解しておく必要があります。
産前産後休業は、雇用形態を問わずすべての女性労働者が対象です。正社員はもちろん、パートタイム・アルバイト・派遣社員も取得できます。会社が「うちは認めない」と対応することは労働基準法違反となり、罰則(6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)の対象になります。また、産前産後休業期間中およびその後30日間の解雇は、労働基準法第19条により原則として禁止されています。担当者は「雇用形態に関係なく全員が対象」という大前提を、社内の管理職・チームメンバーにも周知しておくことが重要です。
以下の表で、産前・産後それぞれの期間と取得の性質を確認してください。
区分 | 期間 | 取得の性質 | 備考 |
産前休業(単胎) | 出産予定日の6週間前(42日前)〜出産日 | 任意(本人の請求が必要) | 多胎以外 |
産前休業(多胎) | 出産予定日の14週間前(98日前)〜出産日 | 任意(本人の請求が必要) | 双子以上 |
産後休業 | 出産翌日〜8週間 | 強制(原則就業禁止) | 6週経過後は本人希望+医師許可で復職可 |
※ 産後6週間経過後は、本人が就業を希望し、かつ医師が支障ないと認めた業務に就くことは差し支えありません(労働基準法第65条第2項)。ただし、あくまで例外的な取り扱いであり、多くの場合は産後8週間きっちり休業してから育休に移行します。
参考:労働基準法第65条
産前休業の開始日は「出産予定日を含めて6週間前(42日前)」です。出産予定日当日も産前休業に含まれます。たとえば出産予定日が2026年3月31日であれば、産前休業の開始日は2026年2月18日(42日前)となります。
注意点として、産前休業はあくまで本人からの請求があって初めて取得できる「任意」の制度です。本人が希望しなければ、出産予定日ギリギリまで就業を継続することも法律上は可能ですが、会社としては本人の体調や業務状況を踏まえて、早めに意向確認を行うことが望ましいでしょう。
多胎妊娠(双子以上)の場合は、特例として出産予定日の14週間前(98日前)から産前休業を請求できます。たとえば出産予定日が2026年3月31日であれば、多胎の場合の産前休業開始日は2025年12月24日(98日前)となります。
産後休業は「出産翌日を1日目として56日間(8週間)」です。産前休業とは異なり、本人の請求がなくても会社は必ず休業させなければなりません(強制休業)。
出産日が予定日より早まった場合、産前休業期間は短縮されますが、産後休業は実際の出産翌日から8週間が適用されます。逆に出産が予定日より遅れた場合は、産前休業期間が延び、産後休業は遅れた分から起算して8週間となります。いずれも「実際の出産日」が基準となる点をしっかり押さえておきましょう。
また、死産・流産の場合も産後休業の規定は適用されます。ただし対象となるのは、妊娠4ヶ月(85日)以上の分娩の場合です。これには早産・死産・流産・人工妊娠中絶も含まれます。担当者として非常にデリケートな場面になりますが、法令上の正確な対応が求められます。
【スケジュールイメージ(出産予定日:2026年3月31日の場合)】
2026年2月18日(産前42日目) ← 産前休業開始(任意取得)
↓
2026年3月31日 ← 出産予定日(産前休業終了)
2026年4月 1日 ← 産後休業開始(出産翌日から自動的に開始)
↓
2026年5月26日 ← 産後休業終了(出産翌日から56日目)
2026年5月27日 ← 育児休業へ移行(別途手続きが必要)
※ 出産日が予定日と異なる場合は、産後休業の起算点がずれるため、変更届の提出が必要です。
妊娠・出産の報告を受けたら、まず行うべきなのが制度の周知と本人の意向確認です。育児・介護休業法では、事業主は産休・育休に関する制度を周知し、取得の意向を確認することが義務づけられています。
確認すべき事項としては、出産予定日・産休開始希望日・産休中の連絡方法・住民税の扱い(特別徴収の継続か普通徴収への切り替えか)などが挙げられます。
2025年10月1日施行の法改正により、妊娠・出産の申し出を受けた際には、個別に意向を聴取し、配置・業務量の調整や両立支援制度の利用期間等について配慮することが義務化されました。これは書面やメール等での個別対応が求められるものですので、面談や書面を用いた意向確認フローを整備しておきましょう。
産前産後休業中の社会保険料免除を受けるためには、「産前産後休業取得者申出書」を事業所の管轄する年金事務所または事務センターに提出する必要があります(健康保険組合に加入している場合は、組合に別途確認が必要です)。
提出期限は「産前産後休業期間中、または産前産後休業終了日から起算して1ヶ月以内」です。提出が遅れると社会保険料免除の適用開始が遅れる可能性があるため、産前休業に入ったらできるだけ早めに提出することをお勧めします。
なお、出産日が予定日と異なった場合は、産休期間も変わることから「産前産後休業取得者変更(終了)届」も速やかに提出してください。また、産前休業を取得せず出産した場合でも、産後休業の手続きは必要です。
タイミング | 手続き | 提出先 |
産休開始時 | 産前産後休業取得者申出書の提出 | 年金事務所・事務センター |
出産後(出産日変更時) | 産前産後休業取得者変更(終了)届の提出 | 年金事務所・事務センター |
産休中(随時) | 出産手当金支給申請書の提出 | 健康保険組合等 |
育休移行時 | 育児休業等取得者申出書の提出 | 年金事務所・事務センター |
複数の書類が関わるため、提出時期と提出先を一覧で管理し、担当者間で情報共有しておくことが重要です。出産日のズレや早期終了など、イレギュラーが発生した際の変更届も忘れずに対応しましょう。
出産手当金は、産休中に給与が支払われない期間について、健康保険から支給される給付金です。健康保険に加入している女性労働者であれば、雇用形態を問わず受給できます。
支給期間は、産前42日間(多胎妊娠の場合は98日間)と産後56日間の合計です。支給額の計算式は「支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均÷30×2/3」となります。
会社から産休中に給与が支払われる場合、出産手当金との調整が発生します。給与の額が出産手当金を上回る場合は手当金の支給はありませんが、給与が手当金を下回る場合はその差額が支給されます。申請手続きは「出産手当金支給申請書」を健康保険組合または協会けんぽに提出することで行います。
産休期間中は、労使双方の健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。免除される期間は、産前産後休業開始月から終了予定月の前月まで(終了日が月末の場合は終了月まで)です。
重要なのは、免除期間中も「保険給付を受ける権利」や「将来の年金受給権」には影響がないという点です。社会保険料を納付したものとして扱われるため、年金額が減るといった不利益は生じません。この点を本人に説明しておくと、安心して休業に入ってもらいやすくなります。
申請書類は「産前産後休業取得者申出書」1枚が基本です。産後に続けて育休を取得する場合は、産休終了後に別途「育児休業等取得者申出書」を提出することで、育休中も同様に社会保険料が免除されます。
産休・育休に関連する育児・介護休業法は、2024年5月に改正が成立し(令和6年法律第42号)、2025年4月と10月の2段階で施行されました。人事担当者として、以下の変更点を就業規則・労使協定の整備に反映することが求められます。
改正項目 | 改正前 | 改正後 |
子の看護等休暇の対象拡大 | 小学校就学前の子 | 小学校第3学年修了前の子(9歳まで) |
取得事由の追加・名称変更 | 「子の看護休暇」 | 「子の看護等休暇」(学校行事等も追加) |
残業免除の対象拡大 | 3歳未満の子を養育する従業員 | 小学校就学前の子を養育する従業員 |
育休取得状況の公表義務 | 常時雇用1,000人超の企業 | 常時雇用300人超の企業に拡大 |
2025年4月施行の改正では、子の看護等休暇の対象が小学校3年生修了前(9歳)まで拡大されました。従来「子の看護休暇」と呼ばれていた制度は「子の看護等休暇」に名称が変わり、学校行事への参加なども取得事由に加わっています。就業規則や労使協定の文言が古いままでは法令違反になり得るため、速やかに改定が必要です。
また、育休取得状況の公表義務は、常時雇用する従業員が300人超の企業にまで拡大されました。対象企業は、男性従業員の育児休業取得率、または育児休業・休暇の取得率のいずれかを、年に1回公表する義務があります。自社が対象かどうかを確認し、公表フローを整備しておきましょう。
改正項目 | 内容 |
3歳以降の柔軟な働き方を実現する措置の導入(義務) | テレワーク・時短勤務・時差出勤等から選択できる措置を講ずることが義務化。労働者が申し出た場合に対応する。 |
妊娠・出産申し出時の個別意向聴取と配慮の義務化 | 妊娠・出産の申し出を受けた際に、配置・業務量の調整・両立支援制度の利用期間等について個別に意向を聴取し、配慮することが義務化 |
子が3歳になる前の個別意向聴取と配慮 | 子が3歳になる前のタイミングで、就業条件等について個別に意向を聴取し、配慮することが義務化 |
育休の申し出・撤回の柔軟化 | 出生時育児休業2回目の申出期限を2週間前→1週間前に緩和。開始前日までの撤回が可能に。 |
2025年10月施行の改正では、3歳以降の子を育てる労働者に対して、テレワーク・時短勤務・時差出勤等の柔軟な働き方を選択できる措置を講ずることが事業主に義務化されました。複数の選択肢を用意し、労働者が申し出た場合に適切に対応できる体制を整える必要があります。
加えて、妊娠・出産の申し出があった際の「個別意向聴取と配慮」も義務化されています。これは、配置・業務量の調整や両立支援制度の利用期間等について、個別に面談や書面等で確認する仕組みを作ることを意味します。就業規則の改定に加え、実際の運用フロー(誰がいつどのように面談するか)の設計まで含めて対応を進めましょう。
なお、出生時育児休業の申し出期限も柔軟化されており、2回目の申し出については2週間前→1週間前に緩和され、開始前日までの撤回も可能になりました。従業員が取得しやすい環境整備の観点から、この変更内容を社内に周知することも重要です。
産休に入る社員の業務をどうカバーするかは、企業として早期に対策を取るべき実務課題です。引き継ぎ計画は産休開始の2〜3ヶ月前から着手することが理想です。口頭での説明だけでなく、業務マニュアルや引き継ぎ資料を文書化しておくことで、担当者が不在の間のトラブルを最小限に抑えられます。
代替要員として派遣社員や業務委託を活用する場合は、派遣会社への依頼や契約締結に一定の時間がかかります。産休開始日から逆算して2〜3ヶ月前には検討・手続きを開始することを目安にしてください。チームへの業務分散で対応する場合も、事前に業務量の調整を行い、既存メンバーへの過度な負担が生じないよう配慮しましょう。
産休・育休からの復帰に際しては、復帰予定日の1〜2ヶ月前を目安にフォロー面談を実施することをお勧めします。復帰後の就業時間・担当業務・チームの状況などを事前に確認し、本人が安心して復帰できる環境を整えることが重要です。
育児・介護休業法により、子が3歳になるまでの間は短時間勤務制度(1日6時間勤務等)の導入が会社に義務づけられています。復帰後に本人が申し出た場合は、速やかに対応できるよう就業規則上の整備と運用フローの確立が求められます。
復帰後のトラブルとして多いのが、不当な降格・業務の大幅な変更・マタハラ(マタニティハラスメント)です。これらは男女雇用機会均等法や育児・介護休業法上の不利益取扱いに該当する可能性があり、法的リスクが生じます。管理職に対して法律上の義務と禁止事項を周知し、復帰者が不利にならない環境を整えることが企業の責務です。
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、妊娠・出産・産休取得を理由に不利益な扱いや嫌がらせを行うことです。男女雇用機会均等法第11条の3により、事業主はマタハラを防止するための措置を講じる義務があります。
現場でありがちなのは「産休を取ったらチームに迷惑がかかる」「早めに辞めてほしい」といった空気感です。管理職やチームメンバーへの制度周知と意識啓発を定期的に実施し、そのような雰囲気が醸成されないよう努めましょう。相談窓口を設置し、問題が発覚した場合は速やかに対応することが求められます。マタハラが行政指導・民事訴訟に発展した事例もあり、企業リスクとして軽視できません。
産休・育休の対応は、手続きの期限が多く、担当者の属人化リスクが高い業務の一つです。また、2025年の法改正のように、制度が毎年変化する中で、常に最新の対応が求められます。WorkOnは、こうした人事・労務業務の課題をAIとともに解決するHRプラットフォームです。
労務管理機能では、産休・育休に関する各種証明書・契約書類の原案をAIが作成します。法的なガードレールをAIが24時間監視し、コンプライアンスリスクを未然に防止します。また人事マスター機能では、産休に伴う従業員の属性変更が発生した際に、各業務への影響をAIが即時提示します。情報のズレを未然に防ぎ、複数部署間の連携もスムーズになります。
「人事がシステムに合わせる」のではなく、「AIが人事を支える」体制を実現します。産休・育休の手続きを正確かつ効率的に進めたい企業に、WorkOnは最適な選択肢です。
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A. 産前休業を取得しなかった場合でも、産後休業は出産翌日から8週間、会社側の義務として適用されます(労働基準法第65条第2項)。産後6週間は強制的な就業禁止期間であり、本人が希望しても就業させることはできません。
A. 産前休業の期間は短縮されます(予定日より早く産まれた日数分だけ短くなります)。一方、産後休業は実際の出産翌日から8週間が適用されます。出産日のズレが生じた場合は、「産前産後休業取得者変更(終了)届」を速やかに提出してください。
A. はい。産休(産前産後休業)は雇用形態にかかわらずすべての女性労働者が対象です(労働基準法第65条)。出産手当金については、健康保険に加入している方であれば受給できます。なお、派遣社員の場合は派遣元が手続きを行う場合が多いため、事前に確認しておきましょう。
A. 原則として不可です。産前産後休業期間中およびその後30日間の解雇は、労働基準法第19条により禁止されています。また、男女雇用機会均等法第9条第4項により、妊娠中の女性労働者および出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、会社が「妊娠・出産等を理由とする解雇でないこと」を証明しない限り、無効とされます。退職勧奨も同様に、事実上の圧力と認定される場合は法違反となり得ます。
本記事では、産休(産前産後休業)の法定期間・企業の手続き・給付金の仕組みから、2025年施行の育児・介護休業法改正対応まで、実務に必要な情報を整理しました。最後に要点を整理します。
産休(産前産後休業)は労働基準法第65条に基づく制度で、産前6週間(多胎は14週間)・産後8週間が法定の期間です。産後6週間は強制就業禁止であり、雇用形態を問わずすべての女性労働者に適用されます。
企業側の手続きは「産前産後休業取得者申出書」を起点に複数発生します。提出期限の管理を徹底し、出産日のズレが生じた場合の変更届も忘れずに対応してください。
2025年には育児・介護休業法の改正が4月と10月の2段階で施行されました。個別意向聴取の義務化・柔軟な働き方整備・育休取得率の公表義務拡大など、企業に求められる対応は確実に広がっています。就業規則と運用フローの見直しを早めに進めることが重要です。

Professional AI Media編集部