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HRテック(HR Tech)入門ガイド|基礎知識から落とし穴・導入の流れを人事の実務目線で整理

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HRテック(HR Tech)という言葉は、採用管理から勤怠、給与、タレントマネジメントまでを含む幅広い概念です。範囲が広いぶん、「結局どこから手を付ければいいのか」が見えにくいまま検討が止まってしまうケースも少なくありません。

本記事では、HRテックの基本的な定義から、注目される背景、領域ごとにできること、導入で失敗しやすいポイント、そして自社に合うサービスの選び方までを整理して解説します。

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目次

HRテック(HR Tech)とは

まずはHRテック(HR Tech)の定義や概要について紹介します。

「人事」と「技術」を掛け合わせた造語

HRテック(HR Tech)は、Human Resources(人事・人材)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。クラウド、AI、データ分析といった技術を用いて、人事領域の課題を解決するサービスや取り組み全体を指します。特定の製品カテゴリを表す言葉ではなく、採用管理システムから勤怠管理システム、タレントマネジメントシステム、従業員サーベイまで、幅広い顔ぶれがこの一語に含まれます。

範囲が広いために話が噛み合わないことも多いのですが、共通しているのは「人に関する情報をデータとして扱えるようにし、判断と作業の質を上げる」という方向性です。紙の履歴書、担当者の記憶、部門ごとのExcelに分散していた情報を一箇所に集め、必要なときに取り出せる状態をつくる。その基盤の上で採用や配置、評価の意思決定を支えていく。この二段構えで捉えると、自社にとってどこから手を付けるべきかが見えやすくなります。

よくあるHRテック(HR Tech)の一覧

具体的にどんなツールがHRテックと呼ばれているのかを、カテゴリ単位で並べていきます。

カテゴリ

代表的な呼び名

主に担う業務

採用管理

採用管理システム(ATS)、ダイレクトリクルーティング、面接支援ツール

応募者データの一元管理、選考進捗の可視化、日程調整、母集団形成

労務管理

労務管理システム、人事マスタ、電子契約・雇用契約ツール

入退社手続き、社会保険・雇用保険の届出、従業員情報の一元管理

勤怠管理

勤怠管理システム、就業管理システム、工数・稼働可視化ツール

打刻、残業・休暇の申請と承認、労働時間の集計、36協定の管理

給与・経費

給与計算システム、年末調整ツール、経費精算システム

給与計算、明細の発行、振込データ作成、控除や手当の管理

評価・育成

タレントマネジメントシステム、人事評価システム、LMS(学習管理)

スキルや評価履歴の可視化、目標管理、研修の配信と受講管理

組織・エンゲージメント

従業員サーベイ、パルスサーベイ、1on1支援ツール

満足度やコンディションの定点観測、離職予兆の把握、面談記録

分析・戦略

ピープルアナリティクス、要員計画ツール、人的資本開示支援

人事データの分析、配置シミュレーション、開示用データの集計

横断・AI

人事向けAIアシスタント、社内問い合わせチャットボット

規程に基づく問い合わせ対応、書類の原案作成、データの一次チェック

従来の人事システムとの違いはどこにあるか

HRテック(HR Tech)と従来の人事システムの違いは大きく三点あります。

一つ目は提供形態です。自社サーバーで運用するオンプレミス型が主流だった時代から、クラウド型が中心になり、法改正への対応や機能追加が継続的に提供されるようになりました。

二つ目はデータの扱い方です。従来は記録と出力が主目的でしたが、現在は蓄積したデータを分析し、離職の兆しや残業の偏りといった予測・示唆につなげる用途が加わっています。

三つ目は使う人の範囲です。人事担当者だけが操作する道具から、従業員自身が申請・確認し、管理職が自部門の状況を把握する仕組みへと広がりました。

つまりHRテックは、既存システムの置き換えというより、人事の仕事の進め方そのものを設計し直す前提として登場している、と考えると実態に近いといえます。

人事DX・タレントマネジメントとの関係

近い場面で使われる言葉が多く、混同されやすいところを整理しておきます。

「人事DX」は、テクノロジーを使って人事の業務プロセスや役割そのものを変革する取り組みを指し、HRテックはそのための手段という位置づけになります。

「タレントマネジメント」は、従業員のスキルや志向を可視化して配置・育成に活かす考え方であり、HRテックが扱う一領域です。「人的資本経営」はさらに上位の経営概念で、人材を費用ではなく価値創造の源泉として捉える発想を指します。

言葉の階層としては、人的資本経営という考え方があり、それを実現する取り組みとして人事DXがあり、その実行手段としてHRテックがある、という並びで理解できます。この整理ができていると、社内で提案する際に「ツール導入の話」ではなく「経営課題への対応」として説明しやすくなります。

HRテック(HR Tech)への関心が高まっている4つの背景

なぜこの数年で急に話題が増えたのか、構造的な要因から見ていきます。

クラウドが前提の環境へシフト

かつては人事情報という機微なデータを社外に置くことへの抵抗が強く、オンプレミス型が選ばれてきました。自社で管理できる安心感やカスタマイズ性の高さは確かな利点でした。一方で、法改正のたびに改修費と工数が発生し、システム部門への依存も避けられませんでした。

現在のクラウドサービスは、通信の暗号化やアクセス権限の細かな設定、IPアドレス制限、第三者認証の取得といった水準が一般化しています。

初期費用を抑えて始められ、制度変更への対応もサービス側で継続的に反映される。この二点が意思決定のハードルを大きく下げました。結果として、更新期を迎えた企業がクラウドへ切り替える流れが定着し、HRテックの選択肢そのものが増えていきました。

人的資本への注目と情報開示の要請

労働人口の減少が続くなかで、限られた人員でどう成果を出すかという問いは、どの企業にも共通しています。採用で数を確保する発想だけでは追いつかず、いま在籍している人材の力をどう引き出すかが問われるようになりました。

加えて、人的資本に関する情報開示への要請が高まり、人材育成や多様性に関する状況を数値で説明する場面が増えています。

ここで壁になるのが、社内にデータが揃っていないという実務的な問題です。誰がどんなスキルを持ち、どの研修を受け、どれだけ定着しているのか。そうした情報が部門ごとに散らばっていると、開示のたびに集計作業が発生します。データを日常業務のなかで自然に蓄積する仕組みへの需要が、HRテックへの関心を押し上げています。

働き方と雇用形態の多様化

テレワーク、フレックスタイム、時短勤務、副業の許可、業務委託や再雇用の増加など、同じ会社のなかに複数の働き方が並存する状態が当たり前になりました。これは制度設計だけでなく、日々の管理業務に直接影響します。

勤務形態ごとに集計ルールが異なれば、月次の締めは複雑になります。オフィスにいない従業員の勤務実態は、出退勤の記録だけでは把握しづらくなります。手当や交通費の扱いも一律ではなくなります。こうした複雑さを人手の注意深さだけで支えるのは限界があり、ルールをシステム側に持たせる必要性が高まりました。多様な働き方を制度として認めることと、それを運用しきれる仕組みを持つことは、切り離せない関係にあります。

生成AIによって「作業そのもの」が動き始めた

ここ数年で最も大きい変化は、AIの役割が分析や推薦から、作業の実行へと広がったことです。従来のHRテックは、データを入力すれば集計や可視化をしてくれる仕組みでした。判断材料は増えても、問い合わせへの返答、書類の下書き、数値の突き合わせといった手間は人の側に残っていました。

生成AIの実用化により、規程を踏まえた回答文の作成、申請内容の一次チェック、異常値の検知と説明といった工程をAIが担える段階に入りました。これは「便利な画面が増える」のとは質の違う変化です。

人事担当者が処理に追われる時間を削り、制度設計や個別対応といった判断の仕事に時間を戻せる可能性が出てきた、という意味を持ちます。HRテックを検討するうえで、この段階差は選定の分かれ目になります。

HRテック(HR Tech)でできること|採用・労務・勤怠・給与・評価

領域ごとに何ができるのかを、入社から日々の運用までの順に並べて確認していきます。

採用と入社前後の手続き

採用領域は市場が大きく、サービスの種類も豊富です。採用管理システム(ATS)は求人媒体からの応募データ取り込み、選考進捗の管理、面接日程の調整、紹介会社とのやりとりを一元化します。日程調整のメール往復や進捗のスプレッドシート更新に費やしていた時間が減り、候補者と向き合う時間に振り向けられるのが実務上の効果です。

AIを用いた書類の要約やマッチング精度の向上、潜在層へのアプローチを支援するダイレクトリクルーティング型のサービスも広がっています。ただし採用は、選考スピードが上がるほど内定後のフォローや入社手続きの負荷が前に詰まってくる領域でもあります。応募者管理だけを最適化すると、入社時の書類回収や社会保険の手続きで詰まる構造が残ります。採用ツールと労務側の仕組みが情報を受け渡せるかどうかが、実際の効果を左右します。

労務手続きと従業員データの管理

入退社の手続き、扶養や住所の変更、社会保険や雇用保険の届出といった労務業務は、正確さと期限が同時に求められる領域です。ここでHRテックが担うのは、従業員情報を人事マスタとして一元化し、変更があった箇所を関連する手続きへ自動的に反映させることです。

従業員本人が入社時に自分の情報を直接入力する運用にすれば、人事側の転記作業と確認の往復が減り、マスタは常に最新の状態に保たれます。書類の作成についても、必要事項を埋めた原案を自動で用意する機能が一般化してきました。この領域の価値は「早く終わる」ことより、「情報の出どころが一つになる」ことにあります。人事マスタが信頼できる状態であれば、勤怠、給与、評価といった後続の業務すべてが正確になり、確認のための問い合わせも自然に減っていきます。

勤怠管理と労働時間の適正化

勤怠は、HRテックの導入が最も進みやすい領域です。理由は明快で、毎月必ず発生し、対象が全従業員で、法令が絡み、しかも手作業では確実にミスが出るからです。

打刻方法の多様化(PC、モバイル、ICカード)に加えて、フレックスや変形労働時間制、裁量労働制といった制度ごとの集計ルールをシステム側に持たせられる点が効いてきます。実務でとくに助かるのは、未打刻・未申請の従業員をダッシュボードで一覧できることと、時間外労働の上限に近づいた段階でアラートが出ることです。締め直前になって督促に追われる状況や、集計後に上限超過が判明して対応が後手に回る状況を、事前に手を打てる状態へ変えられます。労働時間の管理は、記録の正確さだけでなく、気づくタイミングの早さが結果を分けます。

給与計算と支給後の事務

給与計算は、勤怠と人事情報が揃っていて初めて成立する業務です。それゆえに、システムが分断されているときの負荷が最も大きく現れる領域でもあります。勤怠システムからCSVを出力し、手当や控除を加工して給与ソフトへ取り込む。この工程が残っている限り、月末の数日は転記と検算に消えていきます。

勤怠・人事データが自動で連携される構成であれば、加工作業なしで計算を始められ、決まった手順に沿って進めることで担当者ごとのやり方の違いもなくなります。振込用ファイルの作成、給与明細の公開、控除項目の管理といった支給後の事務までを同じ仕組みで扱えると、月次の業務全体が予測できる形に落ち着きます。属人化が解けることの意味は大きく、担当者が不在でも回る状態は、リスク管理としての価値も持ちます。

評価・育成とタレントマネジメント、そして分析

従業員が数十名を超えると、評価の運用と人材配置は一気に難しくなります。評価シートの配布と回収、期限の管理、集計、フィードバックの記録といった作業は、それ自体が相当な工数です。タレントマネジメントシステムは、この運用を支えながら、スキルや経験、志向性、評価履歴といった情報を蓄積していきます。

蓄積されたデータは、配置や育成の検討材料になります。誰にどの経験が不足しているのか、どの部署で特定のスキルが偏っているのか。こうした問いに数値で答えられるようになると、人事の提案は説得力を持ちます。従業員サーベイやエンゲージメント調査を組み合わせれば、コンディションの変化や離職の兆しを早い段階で捉えることも可能になります。ただしこの領域は、データが一定量たまるまで効果が見えにくいという性質があり、短期の成果を期待すると評価を誤ります。

HRテック(HR Tech)導入のメリット

期待される効果を整理していきます。

転記と二重管理がなくなり、締めが早く終わる

最初に効果を感じやすいのは、データの受け渡しに関わる作業です。勤怠から給与へ、人事情報から各種届出へ。この間にExcelでの加工が入っている企業は多く、そこがミスの発生源にもなっています。連携が自動化されると、作業時間の削減だけでなく、検算のための確認作業も同時に減ります。

体感として大きいのは、月次の締めが読める状態になることです。毎月同じ手順で、同じ日数で終わる。突発的な差し戻しが減り、残業が集中する時期が緩む。人事・労務の業務は、量そのものより「いつ終わるか分からない」ことによる負担が重いため、この変化は日常の質を変えます。

問い合わせ対応と督促に奪われる時間が減る

人事担当者の時間を最も細かく削っているのは、実は個別の問い合わせと未提出者への督促です。有給残日数の確認、規程の解釈、申請方法の説明。一件あたりは数分でも、実務が中断されることの影響は時間以上に大きく、集中して進めたい作業が常に後回しになります。

従業員が自分で確認できる仕組みがあれば、問い合わせの母数そのものが減ります。さらにAIアシスタントを備えた製品では、社内規程や人事データを踏まえた回答を自動で返せるため、判断が必要な相談だけが人の手元に残る構成になります。未提出者へのリマインドを自動化できれば、督促のために名簿を突き合わせる作業もなくなります。中断されない時間が戻ることは、単純な工数削減以上の効果を持ちます。

法令リスクに事前に気づける

労働時間の上限規制、割増賃金の計算、有給休暇の取得義務、社会保険の資格取得や喪失の期限。人事・労務には、遅れや誤りがそのままコンプライアンス上の問題になる論点が数多くあります。手作業での管理では、問題が判明するのは集計後、つまり事後になりがちです。

システムで基準値を設定しておけば、超過の可能性がある段階で対象者が浮かび上がります。誰が、どの部署で、あと何時間の余裕があるのか。この粒度で把握できれば、業務の振り分けや応援体制の検討といった対応が間に合います。法改正への追随についても、クラウド型であればサービス側で反映されるため、制度変更のたびに条文を読み込んで設定を組み直す負担が軽くなります。

属人化がほどけ、データで語れるようになる

「この処理はあの人にしか分からない」という状態は、多くの人事部門が抱える不安です。手順がシステムに定義されていれば、担当者が変わっても同じ品質で業務が回り、引き継ぎに要する期間も短くなります。ベテランの経験が不要になるわけではなく、経験を判断のほうに使えるようになる、という変化です。

同時に、蓄積されたデータは経営との対話の材料になります。残業が特定部署に偏っている、離職が入社二年目に集中している、採用チャネルごとに定着率が違う。こうした事実を数値で示せると、人事施策の提案は「印象」ではなく「根拠」に基づくものになります。人事の役割が管理から戦略へ広がるという話は、この土台があってはじめて現実味を帯びます。

落とし穴:「導入したのに楽にならない」が起きる理由

期待した効果が出ないケースには、共通するパターンがあります。ここでは「導入したのに楽にならない」が起きる理由について分析します。

システムが増えるほど分断も増える

領域ごとに最適な製品を選んでいくと、採用、勤怠、給与、評価がそれぞれ別のサービスになり、その間をExcelとCSVがつなぐ構造になります。画面はどれも新しく、機能も充実しているのに、担当者の手元では転記と突き合わせが増えている。これが最もよく見られる失敗の形です。

原因は選定の順序にあります。個別の機能比較から始めると、連携の設計が後回しになります。避けるためには、最初に「従業員情報をどこで正しい状態に保つか」を決め、そのマスタと各機能がどうつながるかを条件として比べる進め方が有効です。労務・勤怠・給与のように毎月データを受け渡す領域については、同一の仕組みの中で完結する構成のほうが、運用上の負荷は明確に軽くなります。

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「導入すること」が目的になってしまう

「他社が使っているから」「DXを進める必要があるから」という動機で検討が始まると、選定の基準が定まりません。機能の多さや価格の安さで決めてしまい、稼働後に「思っていたほど変わらない」という感想に至ります。

必要なのは、困っている場面を具体的な単位まで下ろしておくことです。「勤怠管理を効率化する」ではなく、「毎月20日以降、未打刻者への督促に担当者二名が半日ずつ費やしている」まで具体化する。ここまで書き出せていれば、どの機能が効くのかも、導入後に何が改善したのかも判断できます。目的の解像度が、そのまま導入の成否につながります。

現場に負担を寄せた設計は定着しない

人事側の作業を減らす設計が、現場の入力作業を増やす形になっていることがあります。従業員や管理職が新しい操作を覚える必要があり、しかもその手間に対する見返りが本人には感じられない。この状態では入力が滞り、督促が発生し、結果として人事の負担が戻ってきます。

回避には、従業員側の操作が日常の動きに沿っているかを実際に確認することが欠かせません。打刻や申請が数タップで終わるか、スマートフォンで完結するか、通知が適切なタイミングで届くか。トライアル期間があるサービスであれば、人事担当者だけでなく現場の数名に試してもらう進め方が確実です。定着しない仕組みは、機能がどれだけ優れていても効果を生みません。

HRテック(HR Tech)導入の流れ

前章の落とし穴を踏まえて、遠回りにならない進め方を4つのステップで見ていきます。

①現状を棚卸しする

出発点は現状の棚卸しです。人事・労務の業務を一覧にし、それぞれに「発生頻度」「担当者数」「所要時間」「ミスが起きやすいか」を書き添えていきます。この作業自体に半日から一日かかりますが、ここを飛ばすと選定の基準が主観的になります。

書き出す際は、業務名ではなく場面で捉えることが有効です。「年末調整」ではなく「申告書の未提出者に三回リマインドし、記載漏れを電話で確認している」といった粒度です。誰が何に時間を使っているかが見えると、優先すべき領域は自然に浮かび上がります。多くの場合、金額の大きい業務ではなく、頻度が高くて中断を招く業務が上位に来ます。

②優先順位を決める

すべてを同時に変えようとすると、現場の負荷が集中して失敗します。棚卸しの結果から、効果が出やすく影響範囲を制御しやすい領域を最初の対象に選ぶ進め方が現実的です。実務では勤怠管理から着手する企業が多く、これは毎月発生し全社が対象で効果が数値で示しやすいという条件が揃っているためです。

同時に、一年後・三年後にどの状態を目指すのかも粗くでも描いておきます。将来的に評価や配置のデータ活用まで広げるつもりなら、最初に選ぶ仕組みが従業員データの基盤として使えるかが条件に加わります。ここを現場のマネージャーや情報システム部門を含めて議論しておくと、後戻りが減ります。

③試してから選ぶ

候補を絞る段階では、機能一覧の比較だけで判断せず、自社の実際のデータと運用で試すことが重要になります。無料トライアルを提供しているサービスであれば、一部門・一か月といった範囲で実際に回してみる。この一手間で、資料からは分からない使い勝手や、自社特有の制度への対応可否が見えてきます。

確認しておきたいのは、既存データの移行方法、権限設定の柔軟さ、サポートの応答体制、そして解約や乗り換えの条件です。導入時の労力に注目が集まりがちですが、合わなかったときに引き返せるかどうかも判断材料になります。初期費用が抑えられ、基本機能を無償で試せるサービスが増えているため、比較の負担は以前より軽くなっています。

④効果を測って見直す

稼働後は、事前に書き出した「困っている場面」がどう変わったかを測ります。締めに要した日数、問い合わせ件数、督促の回数、時間外労働の分布など、棚卸しの段階で数えていた指標をそのまま使えると比較が容易です。半年から一年の短いサイクルで確認し、想定と違う部分は運用ルールから調整していきます。

見直しの対象は機能だけではありません。誰が何を入力するのか、承認は何段階必要か、例外はどう扱うのか。こうした運用の取り決めが実態に合っていないことが原因である場合も多くあります。ツールを変える前に運用を疑う順序を守ると、無駄な乗り換えを避けられます。

HRテック(HR Tech)の選び方

比較の軸を、機能表に現れにくい部分から挙げていきます。

コストは初期費用と将来の人数まで含めて見る

月額料金の比較だけでは実際の負担が見えにくいです。初期設定費用、データ移行の費用、オプション機能の追加料金、従業員数が増えたときの単価変化、そして社内で発生する運用工数までを含めて考える必要があります。とくに従業員数に連動する課金の場合、数年後の想定人数で試算しておくと判断を誤りません。

近年は、基本機能を無償で提供し、AI機能などの高度な部分だけを従量課金にする料金設計も登場しています。固定費を抑えて始められる一方、使う量によって費用が変動するため、どの業務にどの程度使うのかを見積もっておくと社内の説明もしやすくなります。稟議の観点では、削減できる工数を金額に換算した資料が用意できるかどうかも実務上のポイントになります。

個人情報とセキュリティの扱い

人事データは、給与、評価、家族構成、健康に関する情報まで含む、社内で最も機微な情報の集まりです。クラウドサービスを選ぶ際には、通信の暗号化、保管場所、アクセス権限の粒度、操作ログの記録、第三者認証の取得状況を確認する必要があります。自社の情報セキュリティポリシーと照らして問題がないかを、情報システム部門と一緒に見ておくと安心です。

見落としやすいのは、権限設計の実務です。管理職が自部門のどこまで見られるのか、給与情報にアクセスできるのは誰か、退職者のデータをどう扱うのか。この設計が粗いと、運用開始後にトラブルの種になります。またデータ活用の前提として、従業員への説明と同意の取り方も整理しておく必要があります。技術的な安全性と、運用としての適切さは別の論点です。

AI機能は「根拠が見えるか」で判断する

AI搭載をうたう製品が増えているため、その中身を見極める観点が必要になります。ここでは二つの点に注目すると判断しやすくなります。

回答の根拠となるデータを確認できるか

AIが「該当者は三名です」と答えたとき、その三名がどのデータをどう照合した結果なのかを追えるかどうかは決定的な違いになります。人事の業務は、結論だけでは使えません。従業員や管理職に説明する場面があり、監督署への対応もあり、判断の責任は人が負います。根拠を示せないAIの出力は、確認作業が二重に発生するだけで、かえって負担が増えます。

参照した勤怠データ、適用した規程、計算の過程が画面上で確認できる設計であれば、AIの出力を安心して起点にできます。選定時には、デモや試用の場面で「なぜその結論になったのかを追えるか」を実際に操作して確かめておくと確実です。

自社の制度やデータを踏まえた回答になっているか

汎用的な生成AIは一般的な労務知識には答えられますが、自社の就業規則や勤務体系、給与テーブルは知りません。人事の問い合わせの多くは「うちの場合はどうなるか」であり、一般論では解決しません。

社内の人事データや規程に接続され、それを踏まえた回答が返る仕組みかどうかが、実務での使用可否を分けます。あわせて、汎用AIと同等の自由度で相談できるかも確認したい点です。定型の質問にしか答えられない仕組みでは、想定外の相談が人の手元に戻ってきます。自社データに基づく正確さと、幅広く相談できる柔軟さの両立が、実際の負荷軽減につながります。

人事業務を担うProfessional AI「WorkOn」

WorkOnは、労務管理・勤怠管理・給与計算を分断させずに扱えるよう設計された、人事業務のためのProfessional AIです。

従業員情報を人事マスタとして一元管理し、勤怠の打刻から締め、給与計算への連携までを同じ仕組みの中で完結させます。CSVの加工や転記が発生しない構成であるため、月次業務の負荷が予測できる形に落ち着きます。

勤怠面では、ダッシュボードでの未締め者確認や36協定に関するアラートを備えており、締め直前の督促や、集計後に超過が判明する事態を避けられます。

給与計算は決まったステップで進む設計になっているため、担当者ごとのやり方の差が生まれにくく、属人化への不安も軽くなります。振込用ファイルの作成や給与明細の公開といった支給後の事務まで、一括して管理できます。

WorkOnの特徴は、人事労務の実務を支援するAIアシスタントが搭載されている点です。

汎用的な生成AIと同等の自由度で相談できる一方、社内の人事データに接続されているため、「うちの場合はどうなるか」に踏み込んだ回答が返ります。

問い合わせへの対応、申請書類の原案作成、データの集計といった「調べる・書く・答える」工程を、AIと一緒に進められる構成です。

そのうえで、参照した人事マスタや勤怠データも確認できるため、根拠を追ったうえで判断を下せます。

目視での全件チェックにつきまとう見落としの不安が、確認できる状態に置き換わることが、この設計の狙いです。

なお料金面では、労務・勤怠・給与の基本機能が0円で提供され、前払いクレジット方式でAIを利用した分だけ費用が発生します。初期コストを抑えて始められ、AI機能を含む全機能を無料で30日間試せるため、実際の業務で確かめてから判断できます。

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まとめ:HRテックの導入で人事労務のの次の一手へ

HRテック(HR Tech)は、人事領域の課題をテクノロジーで解決する取り組み全体を指す言葉です。範囲が広いため、定義を覚えるだけでは自社の判断材料になりません。重要なのは、採用から労務、勤怠、給与、評価、分析までのどこに自社の詰まりがあるのかを具体的な場面まで下ろし、そこに効く仕組みを選ぶことです。

そのうえで、システムを増やすほど分断が生まれるという構造には注意が必要です。とくに毎月データを受け渡す労務・勤怠・給与については、つながっている構成であることが運用の軽さを大きく左右します。そして技術の側では、AIが分析や可視化にとどまらず、一次チェックや書類作成といった実務そのものを担う段階に入りました。人事が処理に追われる時間を判断に戻せるかどうかは、この段階の製品を選べるかにかかっています。

最後に、最終的な判断を人が担うという原則は変わりません。AIが根拠とともに整理し、人が文脈を読んで決める。その役割分担を前提に置いたうえで、自社の業務に合う仕組みを見極めていくことが、遠回りのない進め方だといえます。

人事労務向けAIエージェント「WorkOn」の製品資料

Professional AI Media編集部
執筆

Professional AI Media編集部

株式会社On Technologiesが運営する「AIによる業務変革と成長を支援する Professional AI Media」を編集しています。