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休職期間とは?目安や決め方、給与・社会保険の扱いから延長・解雇との関係まで解説

休職期間とは?目安や決め方、給与・社会保険の扱いから延長・解雇との関係まで解説
この記事を読んでわかること
  • 休職期間の定義や休職・休業・欠勤の違い

  • 事由別の休職期間の目安と決め方

  • 休職期間中の給与・社会保険・税金の取扱い

  • 休職期間の延長判断と、自然退職・解雇との関係

抑うつ・メンタル不調の従業員が休職するときの対応手順と復職までの流れ

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従業員が病気やケガ、個人的事情などの理由から仕事を長期で休まざるを得なくなった場合、人事労務の担当者は会社が定める休職期間および関連ルールに則った対応を行わなければなりません。

また、休職期間は、毎月の給与支払いや復職に向けた準備とも関係するものです。労務管理の上では、その基本となる知識や考え方を理解しておく必要があります。

この記事では、休職期間の定義や目安、決める際の判断材料などについて詳しく解説します。記事の後半では、休職期間中に人事労務担当者が行うべき従業員フォローや、休職期間の延長判断、解雇との関係も解説します。

これから自社における休職期間の設計や、休職中の従業員対応を行う方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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目次

休職期間とは

休職期間の設計や適切な従業員対応を行うためには、最初に「休職期間がどういうものか?」という基本的な定義や考え方を知ることが大切です。

休職・休業・欠勤の違い

従業員が休むことを指す用語には、この記事のテーマである休職のほかに、休業と欠勤があります。

休職は、何らかの理由で働けない状態の従業員に対して、会社側が一定の期間休ませることです。一般的には、ケガや心の不調などを要因とするケースが多いでしょう。休職は、会社が一定期間について従業員の労働の義務を免除することとも言い換えられます。休職制度は法律上規定されているものではなく、各社が就業規則などにより独自に制度を設けるものです。したがって休職制度が設けられていない場合に、従業員から会社に対して休職を求めることはできません。

次に休業は、従業員が本来は就業すべき日・期間について会社か就業を免除することです。労働基準法をはじめとした法律で定められていることが一般的です。具体的には、産前産後休業、育児休業や介護休業のほか、経営上の理由や職場が被災したことで仕事ができないことによる会社都合による休業があるでしょう。会社都合による休業の場合には、従業員に対して平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが必要です(天災地変などの不可抗力による休業を除く)。法律に定められた休業については、必ず制度を設け、その内容を就業規則に規定する必要があります。

最後に欠勤は、従業員の自己都合による一時的な不就労状態のことです。突発的な私用や体調不良といった短期的な不就労が中心となります。欠勤の場合、原則として給与は支払われません。会社に事前連絡を入れずに無断欠勤した場合、会社の指揮命令(労働契約)への違反とみなされ、就業規則の定めに基づき懲戒処分の対象になる可能性もあるでしょう。

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休職期間は各企業が独自に定めるもの

休職期間については、労働基準法など法令上の明確な規定はありません。そのため、各企業が業務実態や休職事由、従業員の状態などに応じて休職期間を独自に定めることができます。企業が休職期間を定める場合、就業規則でそのルールを明確化する必要があります。

具体的な期間の目安は後述しますが、大企業の場合は最長2~3年程度の休職を認めるケースがあります。これに対して中小企業の場合、3か月~6か月程度が一般的です。休職期間は、会社の経営方針や人事戦略などの影響を受けて定められることが多いようです。

なお、就業規則で、「休職期間満了後に復職できない場合は退職とする」といった規定がある場合、休職期間を終えても仕事を行えない状態が続いており、回復が難しい状況と判断されれば、自然退職扱いとなります。

休職期間の目安

多くの企業では、休職の事由ごとに異なる休職期間を定める傾向があります。また、近年増えているメンタルヘルス不調による休職の場合、ほかの事由とは異なる基準で休職期間を設定する企業もあります。

まず、メンタルヘルス不調以外の一般的な事由について、その概要・休職期間の目安・ポイントを解説しましょう。

私傷病休職

私傷病休職とは、業務外でのケガや病気により長期療養が必要な場合に適用されるものです。多くの会社では、3か月~1年程度を休職期間の目安としています。復職する際には、医師の診断書提出や産業医面談を求めることが多く、具体的な時期は回復状況からの判断を行うのが一般的です。メンタルヘルス不調による休職についても私傷病休職として位置づけている企業もあります。

留学休職

留学休職とは、企業に在職したまま国内外の教育機関で学ぶための休職です。留学の場合、企業が人材育成の一環として制度を導入していることが一般的です。従って、この事由による休職期間は、企業が認める留学期間と重なることが多いです。国内外の大学院などへの留学プログラムなど長期の場合は、2年程度まで認める企業もあります。ただし、事前の承認要件、勤続年数、帰任義務、費用補助の条件等が定められるのが一般的です。

出向休職

出向休職とは、グループ企業や関連企業に出向する従業員を、出向元の企業が休職扱いにするものです。出向休職の期間は、出向先との契約や業務の状況の影響を受けます。一般的には1年~3年程度であり、復職後のキャリアや配置を見据えた設計になるケースが多いでしょう。

組合専従休職

組合専従休職とは、労働組合の専従役員や担当者が、企業に在籍しながら組合活動に専念するための休職制度です。この休職期間は、労働組合における任期と重なります。一般的には、1年ごとの任期更新や再任と連動させることが多いでしょう。

公職就任休職

公職就任休職は、国会議員や地方議会の議員といった公職に就くための休職制度です。休職をして、企業の業務から離れたうえで公職の仕事をするイメージとなります。公職就任による休職期間は、その任期である4年や6年と連動するケースが多いでしょう。

起訴休職

起訴休職は、刑事事件で起訴された従業員が、判決が確定するまでの間に就業停止となる場合に適用されるものです。この休職期間は、判決確定までの長期に及ぶケースもあります。また、従業員が刑事事件で起訴された場合、会社側では判決内容に応じて継続雇用の可否を検討するのが一般的です。

自己都合休職

自己都合休職とは前述の事由以外で、資格取得や家族の看病といった従業員本人の事情による休職です。この事由による一般的な休職期間は、数週間~数か月とされることが多いでしょう。ただし、家族の看病や介護等の場合、状況に応じて延長されるケースもあります。なお、法律で定められた介護休業制度を活用すると、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。

出典:「介護休業」を活用し、仕事と介護を両立できる体制を整えましょう(厚生労働省)

メンタルヘルス不調による休職期間

メンタルヘルス不調の症状の重さ次第で療養に要する期間が大きく変わります。また、メンタルヘルス不調の場合、従業員によって病状が異なりますし、休職期間がその後の回復や復職に影響するケースも多いです。したがって、以下の目安を参考にしながら、本人の病状や主治医の診断・意見などを踏まえて企業としての総合的な判断をすることが大切となります。

メンタルヘルス不調が「軽度」の休職期間目安

強い疲労感や意欲低下、睡眠障害などがあるものの、ある程度の日常生活はできている状態です。このレベルの場合、1か月前後の休職期間になることが一般的です。仕事から離れて十分な休養をとることで、想定よりも早く回復・復職できるケースもあります。

メンタルヘルス不調が「中等度」の休職期間目安

抑うつ状態や不安感が強くなり、日々の業務や生活に支障が出るレベルです。

この状態になると、集中力の著しい低下によるミスや生産性の低下、遅刻・欠勤の増加といった職場での問題が発生しやすくなります。こうした問題が発生したら、3か月~6か月程度の休職により十分に心身を休め、回復状況に応じて段階的な復職を検討するのが一般的です。

メンタルヘルス不調が「重度」の休職期間目安

メンタルヘルス不調が重度になると、著しい不安や抑うつ状態により、外出などが困難になります。このレベルでは、継続的な治療や入院が必要です。回復して復職できるまでには多くの期間を要します。長い場合には1年以上の休職が必要になることもあるでしょう。

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休職期間の判断材料

先述の私傷病休職の場合、3か月~1年程度と休職期間の目安としてはかなりの「幅」があります。この場合、従業員および会社の状況に合う休職期間とするうえでは、以下の3つの判断材料を参考にして、総合的に検討することが重要です。

  • 医師の診断書

  • 休職者の勤続年数

  • 傷病手当金の支給期間

医師の診断書

私傷病休職の場合、医師(主治医)の診断書に基づき回復までに必要な期間を判断するのが一般的です。

医師の診断書に記載された病名や症状の程度や、医師が判断する療養見込期間から客観的かつ適切な休職期間を設定することができます。健康保険の傷病手当金の給付申請との関係上、ケガや病気により「就労不能であること」の主治医の証明が必要です。

また、自社の産業医に休職期間の相談をする場合も、医師による診断書は有効な判断材料になるでしょう。

休職者の勤続年数

休職制度を設ける場合、その期間は、従業員の勤続年数を考慮して設定されることが多いです。私傷病休職の場合には、ケガや病気で働けないことに対し、企業として一定の期間解雇を猶予する措置に近い意味合いを持つことが多いでしょう。このことから、就業規則などにより勤続年数が長く企業に多くの貢献をしてきた従業員に対して、より長い休職期間を規定する傾向があります。

傷病手当金の支給期間

健康保険より病気やケガによる療養中に支払われる傷病手当金の受給期間は、最長で通算1年6か月です。私傷病による休職期間中は給与を支給しないケースが多いことから、休職期間を傷病手当金の支給期間の範囲内に規定する企業も少なくありません。傷病手当金の詳細は、後ほど詳しく紹介しましょう。

休職期間中の給与・賞与・社会保険料・税金の取扱い

休職制度を導入する場合、休職期間中の給与・賞与の支払い方法についても規定しなければなりません。また、労務管理上、給与とあわせて計算する社会保険料や税金の取扱についても原則を確認しておく必要があります。

休職期間中の給与支払いについて

休職期間中に給与を支払うかどうかは、各企業の裁量により就業規則などで規定できます。就業規則などで給与の支払いを規定していなければ、休職期間中の従業員に対する給与の支払い義務がありません。

なお、企業によっては一定の期間に限り給与の一定割合の金額を独自に支払うこともあります。いずれにせよ、休職期間中の給与の支払いに関するルールは、就業規則に必ず規定する必要があります。

出典:就業規則を作成しましょう(厚生労働省)

休職期間中の賞与支払いについて

休職期間中の賞与も、先述の給与と同様に就業規則などで定めがなければ支払い義務はありません。なお、休職期間に入る前の期間が賞与規程などで定められた賞与に関する評価期間である場合、その期間にあげた業務上の実績が評価されれば、賞与が支給される可能性があります。

休職制度を導入する際には、給与とあわせて賞与の支払い方もルール化し、就業規則などに規定しておく必要があります。

休職期間中における社会保険料の扱いについて

社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、休職期間中であっても継続して加入しなければなりません。したがって、休職期間中も保険料の支払い義務が続きます。社会保険料は会社と従業員の折半で支払うものですが、休職中の従業員に給与を支払わない場合、従業員分の保険料の支払い方法には以下のような選択肢があります。その際には、本人同意などの手続きが必要です。

  • 会社が立て替える

  • 従業員から直接徴収する

  • 傷病手当金から社会保険料を差し引いて支給する など

なお、産前産後休業や育児休業を取得する場合は、一定要件に該当した従業員が申請をすることで会社と従業員双方の社会保険料が免除されます。また、労働保険(雇用保険・労災保険)は給与額に基づき算出されることから、給与の支払いがない期間中は保険料が発生しません。

出典:厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)|日本年金機構

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休職期間中における税金の扱いについて

休職期間中の従業員に給与を支払わない場合、所得税は発生しません。

一方で住民税は、一定の非課税要件に該当しない限り、前年の所得に基づいて課税されるため、前年中に所得がある場合には休職中でも納付が必要です。この場合、以下いずれかの方法が選択されます。

  • 【特別徴収】会社側が給与から控除して納付する

  • 【普通徴収】納税者である従業員が市区町村に直接納付する

長期の休職によりまとまった給与が発生しない場合、普通徴収に切り替えるのが一般的ですが、会社が従業員より一括徴収することもあります。住民税は地方税となるため、具体的な手続き方法については休職者の住所がある市区町村に確認してください。

出典:さいたま市よくある質問|従業員が休職中のため普通徴収に切り替えることはできますか。(さいたま市)

休職期間中に利用可能な手当

休職期間中に会社が給与の支払いを行わない場合、従業員は生活費の面で困る可能性があります。休職・休業期間中の所得補償の意味合いで、設けられている制度が「傷病手当金(健康保険)」と「休業手当(労働基準法)」です。この章では、休職期間中に利用できる可能性がある2つの手当について、概要を紹介しましょう。

傷病手当金

傷病手当金とは、ケガや病気で会社を休んでいる間の生活を保障するもので、健康保険による制度です。被保険者本人がケガ・病気で会社を休み、会社から十分な報酬が得られない場合に支給されます。支給要件は、以下の4つをすべて満たすことです。

  • 業務外の事由によるケガ・病気の療養のための休業であること

  • 仕事に就けないこと

  • 連続する3日間を含み、仕事に4日以上就けなかったこと

  • 休業した期間についての給与が、傷病手当金よりも少ないこと

傷病手当金の支給期間は、休業4日目の支給開始日から通算1年6か月です。具体的には、業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間の待期を行ったあと、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給される仕組みになります。

支給額は給与のおよそ3分の2(支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30日で割った数字の3分の2)相当となります。

傷病手当金の受給要件には、細かな注意点があります。休業中の従業員に関する申請手続きを進める際には、自社が加入する健康保険組合や協会けんぽなどの情報を必ず確認してください。

出典:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)(協会けんぽ)

休業手当(会社都合による休業の場合)

休業手当とは、会社側の都合で従業員を休ませた場合に、支払わなければならない手当です。休業手当は、労働基準法第26条に基づくものであり、平均賃金の6割以上の額を支払うことが定められています。私傷病等による休職とは異なり、会社側の事情で就業させられない場合に発生するものである点に注意してください。

ここでいう「会社側の都合」とは、天災地変のような不可抗力の場合を除くすべてのケースです。たとえば「業務量減少にともなう休業」や「親会社の経営難にともなう休業」といった会社側に起因する経営上の障害も該当します。

「平均賃金」については、「算定事由発生日以前の3か月間の賃金総額÷3か月間の総日数」で算出します。

休業手当についても、算出方法などについて細かな注意点があります。この手当の支給が発生する際は、厚生労働省の以下の情報を必ず確認してください。

出典:休業手当について(厚生労働省 桐生労働基準監督署)

休職期間に人事部門が行うべき対応

人事労務の担当者には、従業員の休職中にも行うべき業務があります。特に休職事由がケガや病気である場合、以下を実施しなければなりません。

休職者と定期的なコミュニケーションを図る

ケガや病気による休職期間中は、休職者本人との定期的なコミュニケーションを通して回復状況や職場復帰への意向などを確認することが大切です。

また、定期的なコミュニケーションには、休職中における従業員の動向や生活を確認する目的もあります。たとえば、心身を休めるために2~3日の療養目的に反しない範囲(主治医の指示や社内ルールに反しない範囲)での外出はあり得ますが、事実確認はプライバシーに配慮して行いましょう。

たとえばケガで休職をしているにも関わらず、療養目的から明らかに外れる活動を行っている場合、「実は出勤して業務を行うことができるのでは?」という見方ができるかもしれません。

業務を行うことができる程度に回復しているにも関わらず、会社に対してその申告をせずに休み続けている場合、傷病手当金における制度上の不正受給と疑われる可能性があるため、必要に応じて事実確認や手続の案内を行います。

また、定期的なコミュニケーションには、休職者が抱える不安や悩みを汲み取る目的もあります。従業員が「復職後も同じ部署で働けるか」「自分の居場所がなくなってしまわないか」といった不安を抱くケースは少なくありません。こうした不安を休職期間中にヒアリングしておけば、復職に向けた調整・準備も進めやすくなるはずです。

復職に向けた準備を進める

ケガや病気などで長く仕事を休んだ場合、体力が落ちて集中力が低下したり仕事に必要となる実務的なスキルや業務感覚が鈍っている可能性があります。このような状況から休職者のスムーズな職場復帰を実現するためには、段階的な復帰対応が必要になります。

たとえば、試し出勤制度(リハビリ出勤制度)は、メンタルヘルス不調を抱えた従業員の段階的な復帰を支援するなかで、導入・活用されることが多い仕組みとなります。

また、可能な業種であれば、時短勤務や在宅勤務(テレワーク)などを活用しながら、少ない負担で通勤や仕事に慣れることから支援していくのも一つでしょう。

なお、復職に向けた準備や調整は、休職期間満了の1か月前あたりから始めるのが一般的です。具体的な流れは、以下のようになることが一般的です。

  • 従業員の復職意向を確認するためのヒアリング(復職希望日や勤務形態などの確認)

  • 主治医による復職可能診断書の提出

  • 従業員と産業医との面談、必要により産業医から主治医への情報収集

  • 会社側による復職可否判定

  • 現場管理職との協議と職場環境の確認、復職支援体制の確立

  • 会社側による復職決定

出典:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(厚生労働省)

休職期間の延長を認める判断と考え方

ケガや病気で休み始めたにも関わらず、休職期間内に業務に就けるレベルへの回復ができない場合、従業員から休職期間延長の申し出があることがあります。

そこで検討が必要になるのが、「休職期間の延長を認めるべきか?」や「延長する場合はどのような手続きを行うべきか?」という点です。

そもそも休職期間の延長は認めるべきか?

復職は、原則として休職前に従事していた業務を通常通りに行える状態まで回復した場合に行えるものです。場合によっては部署異動などで従前とは異なる職務に就く可能性もありますが、いずれにせよ「通常通りに働けること」が大きなポイントとなります。

したがって体調が回復しないまま就業規則などに定める休職期間を満了した場合、就業規則の規定にしたがって自然退職扱い等になる可能性が高いでしょう。休職期間を満了していない場合は、主治医の診断書などに基づき延長を判断します。

休職期間の延長を認めるべきかどうかの判断は、「各社が定めた就業規則のとおりであり、体調が休職前の業務を通常通り行える程度まで回復しなければ、延長を認めなくても大きな問題はない」という考え方が原則となります。

ただし、休職の原因がパワハラ、セクハラなどのハラスメント行為、長時間労働等による場合には、就業規則の規定にかかわらず、退職扱い等を無効とした裁判例がありますので、休職期間の延長要否の判断は専門家に相談しつつ慎重を期す必要があります。

また、一部の従業員だけを特別扱いして延長を認めた場合、それが悪い意味での前例になるかもしれません。その場合、ほかの休職者からも同様の延長を求める申し出が生じる可能性があります。こうした状況を防ぐためにも、原則は会社が定める就業規則に基づく取扱いを徹底する必要があるでしょう。

休職期間の延長を認めないほうがよいケース

休職期間の延長を認めないほうがよいのは、従業員側で「明確な回復見込み」を示せないケースです。たとえば、「あと2週間ぐらい休めば回復すると思う」と申告されても、それが本人の主観である場合、本当に2週間で回復する保証はありません。もし2週間後に回復しなければ、再延長の申し出を行う可能性もあるでしょう。

こうした状況を防ぐためには、曖昧かつ本人の主観的な理由による延長は認めず、主治医の診断書など客観的なエビデンスの提出を求めることが基本です。

休職期間の延長を認めてもよいケース

身体のケガや病気の場合、治療方針が明確であれば、主治医は回復までのおおよその期間を判断できるものです。たとえば、主治医より「術後の回復がかなり早いから、あと1か月以内に仕事を始められそう」といった診断があり、それが主治医より明確に伝えられ、従業員からその診断書が提出されていれば、延長を経ての復職準備を進めることも可能でしょう。

これは、主治医や産業医の意見に基づき、会社として休職期間の延長を承認する理由が明確に確認できた場合に限って行われるものです。会社として就業規則に「休職期間満了までに回復が見込めない場合、自然退職扱いとする」と規定している場合は、治療・回復状況がどうであれルール通りの対応をするのが原則でしょう。

人事部門が休職期間の延長を提案・検討するケース

たとえば、「非常に高いスキルを持つ従業員に、どうしても会社に残って欲しいケース」などの場合には、会社の配慮として休職延長を検討することがあります。また、先述の通り休職の原因がハラスメント行為や長時間労働など、何らかの形で会社に起因するものであるような場合には、直ちに退職させるのではなく、休職期間の延長等も検討します。

なお、休職期間の延長を行う場合は、他の従業員から見て不公平感や違和感が生じないようにするために、就業規則に規定を設けておくなどの備えも必要となります。

休職期間と自然退職・解雇の関係と注意点

休職期間中にケガや病気の回復が見込めない場合、多くのケースでは就業規則などの規定に基づき、休職者は会社を退職することになります。具体的には、自然退職もしくは解雇の扱いになることが一般的です。休職期間満了に伴う従業員の退職や解雇については、いくつかの注意点があります。 

休職にともなう退職・解雇の法的ルール

休職制度は企業が独自に設計・導入する制度であり、労働基準法などで休職制度そのものを直接規定していません。ただし、病気やケガなどから回復しないまま休職期間を満了して自然退職や解雇扱いにする場合、その旨を就業規則に規定することが求められます。また、解雇に関しては、休職制度の有無にかかわらず労働契約法上の解雇権濫用の考え方が適用されるため、同法および就業規則の規定に基づく適正な手続きが求められます。

業務上の傷病の場合の解雇制限

従業員が業務上の事由による(労働災害による)傷病にかかって療養のため休業している場合、労働基準法第19条に基づき、療養による休業期間中および休業後の30日間については解雇できない点です。 

これは、傷病で労務を提供できない状況が、従業員自身の責任による債務不履行ではないという考え方によるものとなります。

業務上の傷病により休業する者に対して労働基準法第81条に基づく打切補償(平均賃金の1,200日分)を支払う場合や、天災地変などにより事業継続が不可能となり(同法第19条1項ただし書き)、労働基準監督署長の認定を受けた場合には、例外として解雇が認められています。

労働基準法第19条および第81条のポイントは、以下の厚生労働省サイト上の情報から確認してください。

出典:解雇・退職|厚生労働省 兵庫労働局

休職期間に関する注意点

休職制度は、休職に至る事由や休職中の過ごし方に個人差があることから、設計および取得時の支援をするうえでも複雑で、労使間トラブルにつながりやすいものです。適切に休職制度を運用するには、休職期間について注意すべきポイントを網羅した制度設計が求められます。

休職期間の通算

私傷病休職の制度では、休職期間の通算ルールを定めることが多いです。通算とは、たとえば同じ傷病により2度の休職をした場合に、それぞれの期間を合算して考えるというものです。

私傷病休職の場合、プライベートでの過ごし方が傷病の要因になるため、制度の濫用を防ぐ必要があります。また、私傷病による休職と復職を短期間に繰り返すケースでは、業務への支障が大きくなります。

このような理由から休職期間の通算を規定することが多いのです。

退職金算定や年次有給休暇における休職・休業期間の扱い

休職期間は、退職金の算定や年次有給休暇の付与日数にも影響するものです。考え方は、休職・休業の種類により扱いが異なります。たとえば育児休業・介護休業等の期間は年次有給休暇の付与要件の出勤率の計算上「出勤扱い」とするなどです。

ただし、年次有給休暇を労働基準法の規定よりも多く付与したり、休職期間も退職金の算定基礎に含めたりすることは、制度上問題ありません。就業規則でわかりやすいルールを設計するとよいでしょう。

休職期間中の理想的な過ごし方

ケガや病気による休職期間は、「治療や休養に専念してもらい、良い状態で仕事に復帰できるようにするため」に付与するものです。ただし、うつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調の場合、ときどき調子が非常に良い日があったりします。

こうした症状の場合、まだ動けるうちに活動しておきたいという気持ちから、遠方への長期旅行などに出掛けてしまうこともあるかもしれません。しかし、そこでエネルギーを使い果たして体調が悪くなり結果的に復職が難しくなってしまうのでは、本末転倒でしょう。

このような悪循環を防ぎ、回復から復職までスムーズに向かってもらうためには、会社の思いとして「回復することをじっくり待っている」といったことを休職者に伝えることが大切です。また、休職期間中の過ごし方や生活習慣を確認するうえでは、先ほど紹介した定期的なコミュニケーションも有効でしょう。

まとめ

休職期間は、各企業の休職制度のなかで独自に定められるものです。休職期間を設定する際には、事由や日数、期間中の給与・賞与の支払い有無、方法などについて、就業規則で規定する必要があります。

また、従業員がケガや病気による休職期間に入った場合、定期的なコミュニケーションも必要です。休職期間中の従業員は、ケガや病気からの回復や職場復帰への不安を抱きやすいものです。休職期間終了後のスムーズな職場復帰のためには、人事労務部門で休職者のフォローや支援をすることも大切でしょう。

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安森 将
監修

安森 将

やすもり社会保険労務士事務所 代表

大学卒業後、大手鉄道会社の総合職として 25 年間、主に人事、営業戦略、新幹線予約システム開発業務に携わった後、退職。退職後は社会保険労務士、行政書士などの国家試験に合格し、2023 年に社会保険労務士として開業(現職)。企業勤務時代の経験を活かし、人事労務分野を中心とした会社経営に関する様々な相談業務、働き方改革推進支援センター(厚生労働省委託事業)の専門家、臨時労働保険指導員(東京労働局)としての業務等に従事。大手企業各社オウンドメディア等の人事労務に関する記事執筆や監修の実績も多数。
Professional AI Media編集部
執筆

Professional AI Media編集部

株式会社On Technologiesが運営する「AIによる業務変革と成長を支援する Professional AI Media」を編集しています。