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職場のメンタルヘルス対策|企業の施策と進め方を解説

職場のメンタルヘルス対策|企業の施策と進め方を解説

厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査によると、仕事や職業生活に強い不安・ストレスを感じている労働者は68.3%にのぼり、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業または退職した労働者が発生した事業所は12.8%を占めています。こうした状況を受け、職場のメンタルヘルス対策は人事・労務担当者にとって優先度の高い実務課題となっています。

本記事では、厚生労働省の指針が定める4つのメンタルヘルスケアの内容と役割分担、ストレスチェック義務化をめぐる最新の法改正動向、および企業が実践できる具体的な施策を順に解説します。

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目次

職場のメンタルヘルスとは

「メンタルヘルス」と「メンタルヘルス不調」の定義

「メンタルヘルス」とは、精神的な健康状態を指す言葉です。職場においては、労働者が心身ともに健やかに仕事へ向き合えている状態を意味します。

一方、「メンタルヘルス不調」はうつ病や適応障害といった診断名がついた状態に限りません。強いストレスや気分の落ち込みを抱えながら何とか出勤を続けている状態、あるいは不眠や集中力低下が続いている状態も含む広い概念です。

重要なのは、「診断されるまで不調ではない」という認識を捨てることです。不調のサインを早期に捉えて対応することが、深刻化の予防につながります。企業としては、診断の有無にかかわらず、従業員の変化に目を向ける仕組みを整えることが求められます。

企業が安全配慮義務を負う根拠

企業がメンタルヘルス対策に取り組む法的根拠となるのが、労働契約法第5条に定められた安全配慮義務です。同条は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定しており、この「安全」にはメンタルヘルスも含まれます。

メンタルヘルス不調を放置した場合、労働災害として認定されるリスクがあるほか、民事訴訟に発展するケースも実際に生じています。また、対応が不十分であることが広く知られれば、採用や企業ブランドへの影響も避けられません。対策コストを「費用」として捉えるのではなく、リスク管理と人材確保の両面から必要な投資として位置づけることが、経営的にも正しい判断です。

参考:労働契約法|e-Gov

厚生労働省が示す「4つのメンタルヘルスケア」

厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年策定、平成27年改正)において、職場のメンタルヘルス対策の基本的な枠組みとして「4つのケア」を示しています。セルフケア・ラインによるケア・事業場内産業保健スタッフ等によるケア・事業場外資源によるケアの4つが継続的かつ計画的に行われることが重要とされており、これらが有機的に連携することで対策の実効性が高まります。

①セルフケア(労働者自身によるケア)

セルフケアとは、労働者自身が自らのストレス状態に気づき、適切に対処することです。ストレスの原因や身体・精神への影響について正しい知識を持ち、早めに相談行動を取れるよう、日頃から準備しておくことが求められます。

企業側の役割は、従業員がセルフケアを実践できるよう支援することです。具体的には、ストレスの仕組みや対処法に関する研修の実施、社内報やイントラネットを通じた情報発信、相談窓口の周知などが挙げられます。セルフケアはあくまでも「自己責任」ではなく、企業が積極的に支援すべき取り組みです。

②ラインケア(管理職・上司によるケア)

ラインケアとは、部下を直接管理する管理監督者が、日常的に部下の様子を観察し、心身の変化に早期に気づいて適切に対応することです。部下の「いつもと違う」変化に気づくことがラインケアの出発点になります。たとえば、遅刻や欠勤の増加、業務上のミスの増加、会議での発言が減った、表情が暗いといった変化が代表的なサインです。

管理監督者が不調の疑いに気づいた際には、本人と個別に話す機会を設け、無理に原因を探ろうとするのではなく、まず「話をしっかり聞く」姿勢を持つことが大切です。そのうえで、状況に応じて産業医や保健師への橋渡しを行います。ラインケアの実効性は管理監督者のスキルに大きく依存するため、企業は定期的にラインケア研修を実施し、スキルの底上げを図ることが重要です。

③事業場内産業保健スタッフによるケア

産業医・保健師・衛生管理者・人事労務担当者といった事業場内の専門スタッフが連携して、メンタルヘルスケアを推進する役割を担います。セルフケアとラインケアが効果的に実施されるよう支援するとともに、心の健康づくり計画の策定や相談体制の整備など、組織的な取り組みの中核を担います。

産業医の選任義務がある事業場(常時50人以上の労働者を使用する事業場)では、産業医を中心とした体制が求められます。50人未満の小規模事業場では、産業医の選任義務はありませんが、地域の産業保健総合支援センター(都道府県ごとに設置)を無料で活用するなど、外部機関と連携した代替体制の構築が現実的な選択肢となります。

④事業場外資源によるケア(外部EAP等)

社内だけでは解決が難しい相談に対応するために、外部の専門機関を活用する仕組みです。代表的なものとして、EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)があります。外部EAPを活用する最大のメリットは、匿名性の確保です。「社内の誰かに知られたくない」という心理的ハードルが下がるため、社内窓口では相談しにくい悩みを抱える従業員が利用しやすくなります。

また、都道府県産業保健総合支援センターでは、事業場に対する無料の相談支援や研修なども提供しており、中小規模事業場でも費用をかけずに活用できます。外部資源の情報を従業員に周知しておくことで、深刻化する前に相談できる経路を確保することが重要です。

参考:職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~(厚生労働省) 

2025年法改正ポイント|ストレスチェック義務化の対象拡大

令和7年5月14日、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)が公布されました。この改正の柱の一つが、ストレスチェックの実施義務の対象拡大です。

現行法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対してストレスチェックの実施が義務付けられており、50人未満の事業場は「当分の間努力義務」とされてきました。改正法ではこの附則が削除され、50人未満の事業場を含む全ての事業場が義務の対象となります。

施行日については、「公布後3年以内に政令で定める日」とされており、2026年5月18日の厚生労働省の労働政策審議会安全衛生分科会において2028年4月1日とする方針が示されました。最初のストレスチェックを完了する期限は2029年3月31日までとなる見通しです。

なお、50人未満の事業場については、労働基準監督署へのストレスチェック結果報告書の提出は義務化されません。ただし、未実施の場合は安全配慮義務違反や行政指導のリスクが生じる点には注意が必要です。

参考:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)(厚生労働省)

ストレスチェック制度の実施フロー

ストレスチェックは、以下のステップを1サイクルとして、毎年継続的に実施します。

  1. 実施計画の策定 実施時期・対象者・実施者・外部委託先などを決定する
  2. 調査票の配布・回収 労働者に調査票を配布し、回答を回収する
  3. 結果の通知 実施者(医師・保健師等)から各労働者に結果を直接通知する
  4. 高ストレス者への面接指導 高ストレスと判定された労働者が希望する場合、医師による面接指導を実施する
  5. 集団分析 部署・チームなどの単位でストレス傾向を集計・分析する(原則10人以上の集団が対象)
  6. 職場環境の改善 集団分析の結果をもとに、長時間労働の是正や業務負荷の見直しなど具体的な改善策を実施する

なお、ストレスチェックの結果は原則として本人の同意なく事業者に提供することはできません。また、結果や面接指導の申し出を理由とした解雇・配置転換などの不利益な取り扱いは法律で禁止されています。

人事・労務担当者が今から準備すべきこと

施行まで猶予があるとはいえ、実施体制の整備には時間がかかります。以下の項目を早期に確認・整備しておくことが重要です。

  • 実施責任者・実務担当者の選任 誰が制度を主管するかを明確にし、役割を社内に周知する
  • 衛生推進者・安全衛生推進者との役割分担の確認 既存の安全衛生体制との連携方法を整理する
  • 外部委託先の選定 実施機関(調査票の回収・分析を担う機関)および面接指導を行う医師の確保を検討する
  • 健康情報の取り扱いルールの整備 結果データの保管場所・閲覧権限・保存期間を定め、規程に落とし込む
  • 従業員への説明体制の構築 実施目的・匿名性の保護・不利益取り扱いの禁止について、あらかじめ周知できる体制を整える

50人未満の事業場向けには、厚生労働省が「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月公表)を公開しています。上記の各準備項目の具体的な進め方や外部委託の活用方法が整理されており、参照することをお勧めします。

参考:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)(厚生労働省) / 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(厚生労働省)

企業が実践できるメンタルヘルス対策10選

1. ストレスチェックの実施と集団分析の活用

ストレスチェックは義務対応としてのみ捉えるのではなく、集団分析の結果を職場改善に活かすことが本来の目的です。部署ごとのストレス要因の傾向を把握し、長時間労働の是正や業務配分の見直しに具体的につなげることで、制度を実質的な予防策として機能させることができます。なお、集団分析は原則10人以上の集団を対象に実施し、個人が特定されないよう配慮することが必要です。

2. ラインケア研修の定期実施

管理監督者が部下の不調に気づくためのスキルは、意識するだけでは身につきません。傾聴の方法、部下の変化に気づくためのチェックポイント、相談を受けた際の対応フロー、産業医への橋渡しのタイミングなどを学ぶ研修を、少なくとも年1回は実施することが望まれます。集合研修に加え、eラーニングを活用することで参加率も向上します。

3. セルフケア研修・メンタルヘルス啓発

従業員全員を対象に、ストレスの仕組みや自分でできる対処法を学ぶ機会を提供します。研修に加えて、社内報やイントラネットでのコラム発信、「こころの耳」(厚生労働省が運営するメンタルヘルス・ポータルサイト)の周知など、日常的に情報に触れる機会をつくることが大切です。

4. 産業医面談・相談窓口の整備

相談窓口は「設置する」だけでなく、「使われる」ことが重要です。窓口の存在と利用方法を繰り返し周知し、相談したことが人事評価に影響しないことを明確に伝えることで、従業員が安心して利用できる環境を整えます。社内窓口と外部EAPを併用することで、相談者の選択肢を広げることも効果的です。

5. 外部EAPサービスの導入

外部EAPは、匿名で専門家に相談できる仕組みとして、社内窓口を補完する重要な役割を果たします。導入にあたっては、対応できる問題の範囲(仕事上のストレスだけでなく、家族問題や経済問題にも対応するかどうか)、匿名性の保護の方法、費用対効果などを確認したうえで選定することをお勧めします。

6. 職場環境の物理的改善

温度・照度・騒音・席のレイアウトといった物理的な環境は、日々の疲労感やストレスに直接影響します。従業員アンケートやストレスチェックの集団分析結果を参考に、改善可能な点から着手します。テレワーク環境においても、自宅のワークスペースの整備支援など、物理的環境への配慮が求められます。

7. コミュニケーション活性化の仕組みづくり

孤立感はメンタルヘルス不調の大きなリスク要因です。定期的な1on1ミーティングを制度化し、上司と部下が業務以外の話もできる場をつくることで、不調の早期発見にもつながります。また、チームメンバーが互いの意見を安心して述べられる「心理的安全性」の高い職場風土は、不調を抱えた従業員が相談しやすい環境の土台になります。

8. 長時間労働の是正・勤怠管理の徹底

長時間労働はメンタルヘルス不調の最大のリスク要因のひとつです。36協定の上限を超えた時間外労働が発生していないか、未申告の残業(いわゆるサービス残業)が存在していないか、勤怠データを適切に把握・管理することが前提となります。データ上の勤務時間と実態が乖離している場合、問題を把握できないまま放置することになりかねません。

9. 休職・復職支援プログラムの整備

メンタルヘルス不調で休職した従業員の職場復帰には、丁寧な段階的支援が必要です。休職中の連絡頻度・方法の取り決め、復職判断のプロセス、リハビリ出勤(段階的な業務復帰)のルールを事前に整備しておくことで、本人と職場の双方に安心感をもたらします。復帰後のフォローアップも含め、一連のフローを文書化しておくことが重要です。

10. メンタルヘルス方針の経営トップによる表明

どれほど施策を充実させても、経営トップが本気で取り組む姿勢を示さなければ、職場には浸透しません。方針表明は「形式的な文書の公表」ではなく、経営会議や全社集会での言及、管理職への方針の直接伝達など、従業員が「会社が本気だ」と感じられる形で行うことが大切です。方針表明により、管理職がラインケアに取り組みやすい組織文化が醸成されます。

メンタルヘルス対策で陥りやすい落とし穴と注意点

個人情報の管理と目的外利用の禁止

ストレスチェックの結果や医師の面接指導の内容は、要配慮個人情報に該当します。本人の同意なく事業者(人事担当者を含む)に開示することは原則として禁止されており、人事評価や配置転換の判断材料に流用することも厳しく制限されています。

健康情報の取り扱いルールを就業規則や内規に明文化し、アクセス権限を適切に管理する体制を整備しておくことが必要です。

対策を「形式」で終わらせない

ストレスチェックを実施しただけで「対策をした」と満足してしまうことは、最もありがちな落とし穴のひとつです。制度の本来の目的は、集団分析の結果を職場改善につなげることにあります。

実施率を上げることと、分析結果をもとに実際に職場環境を変えることは、まったく別の取り組みです。また、担当者が一人でノウハウを抱える「属人化」も、担当者の異動や離職によってノウハウが失われるリスクを生みます。

テレワーク下でのメンタルヘルスの特有課題

テレワークの普及により、従業員の孤立やコミュニケーション不足、仕事とプライベートの境界の喪失といった問題が表面化しています。

また、出社しないために管理監督者が部下の変化に気づきにくく、ラインケアが機能しにくい環境でもあります。画面越しのコミュニケーションを意識的に増やすとともに、勤怠実態を正確に把握する仕組みの整備が特に重要です。

WorkOnで職場のメンタルヘルス対策を支援

職場のメンタルヘルス不調の主要因のひとつが、長時間労働・過重労働です。従業員の働き方の実態を正確に把握し、過重労働の芽を早期に摘むことが、メンタルヘルス対策の根幹を成します。

しかし、勤怠管理や労務手続きの煩雑さ・属人化が、人事・労務担当者自身の過負荷を招いているケースも少なくありません。WorkOnは、こうした課題に対してデジタルとAIの力で応えます。

勤怠データのリアルタイム監視と36協定アラート

WorkOnの勤怠管理機能では、ダッシュボードで未締め者の確認や36協定の違反リスクを一目で把握できます。

月末の勤怠締め作業における未入力者への督促も、担当者が一人ひとり確認する必要がなくなり、見落としによる法令違反リスクを大幅に低減できます。過重労働の実態をリアルタイムで可視化することは、メンタルヘルス不調の予防に直結する重要なアクションです。

AIアシスタントによる労務管理の標準化・属人化解消

ベテラン担当者の経験や記憶に依存しがちな労務相談や手続き対応を、WorkOnのAIアシスタントが24時間コンプライアンスをチェックしながらサポートします。

担当者が対応に迷う場面でも、法的根拠に基づいた一次回答を得られるため、精神的な負担が軽減されます。担当者自身のウェルビーイングを守ることも、組織全体のメンタルヘルス対策の一環です。

データ連携による人事マスターの一元管理

勤怠・給与・人事情報をひとつのプラットフォームで一元管理することで、残業の偏りや休暇取得の状況の異変を早期に発見できます。

特定の部署や個人に業務負荷が集中していることをデータから把握し、組織的な対応につなげることが可能になります。データに基づく組織改善こそが、メンタルヘルス対策を形式から実質に変える鍵です。

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まとめ|組織全体で取り組む職場のメンタルヘルス

職場のメンタルヘルス対策は、個人の問題ではなく、組織が責任を持って取り組む経営課題です。厚生労働省の指針に基づく4つのケアを組み合わせながら、ストレスチェックの結果を職場改善に活かすサイクルを継続することが対策の基本です。

2028年には50人未満の事業場へのストレスチェック義務化が見込まれており、早めの体制整備が求められています。そして、対策の土台となるのは長時間労働・過重労働の是正であり、勤怠・労務管理のデジタル化はその第一歩として大きな意味を持ちます。組織全体でメンタルヘルスを守る文化を醸成することが、従業員の健康と企業の持続的な成長の両方を支えます。

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よくある質問(Q&A)

Q:50人未満の事業場でもストレスチェックの実施は必要ですか?

A:改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)により、50人未満の事業場にも実施義務が拡大されることが決定しています。施行日は2028年4月1日とする方針が示されていますが、体制整備には時間がかかるため、今から準備を始めることをお勧めします。

Q:産業医がいない場合はどうすればよいですか?

A:産業医の選任義務がない50人未満の事業場では、地域の産業保健総合支援センター(全国47都道府県に設置)を無料で活用できます。50人未満の事業場向けのストレスチェック実施においても、地域産業保健センターで医師による面接指導を受けることが可能です。

Q:ラインケアで管理職が負担を感じている場合の対処法は?

A:管理監督者が「自分一人でなんとかしなければ」と抱え込まないよう、産業保健スタッフや人事担当者がすぐに相談に乗れる体制を整えることが重要です。また、管理監督者向けのラインケアを「業務の一部」として評価に反映する仕組みも、負担感の軽減と取り組みの定着に効果的です。

Professional AI Media編集部
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