忌引き休暇とは、大事な家族や親族を亡くした従業員が、その葬儀や諸手続きを行ったり故人を偲んだりする目的で取得する休暇制度の総称です。
本記事では、忌引き休暇の概要および対象範囲や日数、従業員が取得できる他の休暇との違いなどを確認します。記事の後半では、忌引き休暇の一般的な申請・取得の方法と、人事担当者から従業員に案内すべき忌引き休暇の取得における注意点やマナーも紹介します。
忌引き休暇の設計・導入を検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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【勤怠管理の基本】休憩・休日・有給休暇のルール総まとめ
無料でダウンロードする忌引き休暇とは、大事な家族や親族を亡くした従業員が、その葬儀や諸手続きを行ったり故人を偲んだりする目的で取得する休暇制度の総称です。
本記事では、忌引き休暇の概要および対象範囲や日数、従業員が取得できる他の休暇との違いなどを確認します。記事の後半では、忌引き休暇の一般的な申請・取得の方法と、人事担当者から従業員に案内すべき忌引き休暇の取得における注意点やマナーも紹介します。
忌引き休暇の設計・導入を検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

目次
忌引き休暇の制度を適切に設計・運用していくうえでは、この制度の一般的な定義を知ることが大切です。また、従業員からの相談・問い合わせに対して適切な回答をするためには、他の休暇・休日制度との違いも理解しておく必要があります。
まずは、以下の観点から忌引き休暇の定義や他の休暇に関する制度との違いを確認していきましょう。
■忌引き休暇とは
■忌引き休暇と他の休暇・休日制度との違い
忌引き休暇とは、家族や親族が亡くなったときに従業員が取得できる休暇制度の総称です。
忌引き休暇には、法律上の付与義務がありません。したがって多くの企業では、福利厚生として特別休暇の意味合いでこの制度を設けています。付与義務がないため、忌引き休暇の制度自体がない会社もあるでしょう。
忌引き休暇の一般的な付与目的は、通夜や葬儀への参列です。また、近しい人が亡くなってしまったことによる気持ちの整理をする時間を与える形で従業員への配慮の意味もあります。
忌引き休暇を「慶弔休暇」や「服喪休暇」と呼ぶ企業もあります。名称が異なっていても、考え方や目的は基本的に同じです。
忌引き休暇の特徴は、他の休暇・休日制度との違いに着目することでよりイメージしやすくなります。ここでは、忌引き休暇と年次有給休暇・公休の違いについて解説します。
●忌引き休暇と年次有給休暇(いわゆる「有給」)の違い
●忌引き休暇と公休との違い
年次有給休暇は、労働基準法第39条で定められた休暇です。年次有給休暇を取得した日は、休暇であっても賃金が支払われます。
また、業種・業態や、正社員・パートタイム・アルバイトといった区分なく、一定要件に達したすべての従業員に付与される点も年次有給休暇の特徴の一つです。
労働基準法によると、入社後6ヵ月続けて勤務し、8割以上出勤することで年間10日を付与し、以降1年経過するごとに付与日数が増え、最大で年間20日付与されます。また、年次有給休暇を年10日以上付与される従業員には、付与日から1年以内に年5日について、使用者が時季を指定して取得させなければなりません。
これに対して忌引き休暇は、各企業が福利厚生などの位置づけで独自に導入するものです。
法律に定められていないため、制度が存在しなくても違法とはなりません。詳細は後述しますが、付与日数や取得方法も、各企業で独自に決められます。原則は、家族や親族などの近しい人が亡くなった場合に限り、取得できるものとされています。
参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています(厚生労働省)
公休とは、会社が就業規則などによりあらかじめ定めた休日の総称です。具体的には、毎週土日や定休日などの休日や、会社が独自に設定した「創業記念日」、労働契約に記載された「シフトが休みの日」などがこれにあたるでしょう。
公休の多くは、そもそも労働義務がない日であるため無給です。
一方で忌引き休暇の場合、無給・有給について会社が独自に設定できます。
ここまで触れたとおり、忌引き休暇は各企業が独自に設定・導入できる制度です。したがって、その対象親族の範囲や取得可能日数などの詳細な要件を各社が独自に決められます。
しかし、自社が導入した忌引き休暇の対象親族の範囲があまりに狭かったり、日数が少なすぎたりするなどの理由から、従業員が親族等が亡くなった際の重要な手続きや気持ちの整理などを行えないようでは、その後の仕事に支障が出ることもあるでしょう。
このような問題を防ぐためには、制度設計時に、多くの企業が導入する忌引き休暇の対象親族の範囲や日数を参考にするのも一案です。
この章では、以下の流れで忌引き休暇における対象親族の範囲と日数を確認しましょう。
■忌引き休暇の一般的な対象親族の範囲
■忌引き休暇の一般的な日数
一般的な忌引き休暇の対象親族の範囲は、「従業員本人から見て3親等まで」を基準とする企業が多いですが、配偶者や義父母を定めるケースもあります。0親等~3親等までに含まれる人の属性は、以下のとおりになります。
●【0親等】配偶者
●【1親等】父母、子ども
●【2親等】兄弟姉妹、祖父母、孫
●【3親等】叔父叔母、甥姪、ひ孫、曽祖父母
これに対して、いとこ(従兄弟・従姉妹)や祖父母の兄弟姉妹は、4親等にあたります。4親等は、多くの企業で忌引き休暇の対象外です。また、忌引き休暇は原則として配偶者や親族、義父母などを対象とするため、親しい友人知人などは、対象とならないことが一般的です。
忌引き休暇の日数は、就業規則で定めます。実態としては、次のような日数とされていることが多いようです。
●【配偶者・子ども・父母】7~10日
●【祖父母・兄弟姉妹】3~5日
●【孫・叔父叔母・甥姪・ひ孫・曽祖父母】1日
忌引き休暇中における給与の取り扱いは、企業ごとに異なります。一般的には、以下4パターンのいずれかで制度設計されることが多いでしょう。
●【有給・無給】
有給の特別休暇とする企業もあれば、無給休暇または別の取り扱いとするケースも存在します。無給休暇とした場合の賞与の支給や皆勤手当などへの影響は、各企業が定める就業規則および賃金規程などによります。
●【欠勤】
完全に欠勤として扱うパターンです。この場合は給与の支払いがないため、本人の意向を踏まえて年次有給休暇の活用を検討します。
●【基本給のみ】
基本給のみを支給して、休暇中の各種手当は支給対象外にするパターンです。
人事労務の担当者が忌引き休暇の制度設計を行う際には、給与支払いの有無はもちろんのこと、支払う際の計算方法などを就業規則に記載することが大切です。

忌引き休暇は、多くの場合、予期せぬタイミングで急に取得しなければならないものです。また、休暇の取得を申請する従業員は、大事な人を亡くしたことで、気が動転している可能性もあるでしょう。
こうしたなかで取得申請の手続きを速やかに進めるためには、基本的な流れやポイントも就業規則などに明記し、周知しておく必要があります。
以下では、3つのポイントを詳しく解説していきましょう。
■①直属の上司に速やかに連絡する
■②メールなどで詳細に報告する
■③同僚や取引先に連絡する
忌引き休暇を取得する可能性が生じたときには、家族や親族が亡くなった段階で速やかに直属の上司に電話もしくは口頭で連絡させます。
亡くなった時間が深夜・早朝の場合は、まずメールやビジネスチャットなどで第一報を入れさせ、詳細については、翌営業日に電話で補足させるとよいでしょう。
忌引き休暇の取得申請時に収集する情報は、過剰にならないように、従業員には必要な範囲に限り共有をお願いすることが重要です。
●亡くなった人との関係性(例:配偶者、実母など)
●忌引き休暇の希望期間(例:1月21日(水)から26日(月)まで)
●通夜・葬儀・告別式のスケジュール(例:通夜が21日、葬儀と告別式が22日)
●通夜・葬儀を行う会場名と場所(例:◯◯斎場、東京都立川市◯◯)
●家族葬かどうか(例:家族葬のため、企業側の参列は辞退させていただきます)
●休暇中の緊急連絡先(例:03-◯◯◯◯-◯◯◯◯(妻の実家))
通夜・告別式の会場や日程などの詳細は、家族・親族が亡くなった翌日以降に判明することが一般的です。したがって、忌引き休暇の取得申請段階で判明している情報(故人との関係・休暇期間など)を先に口頭で報告させます。それ以外の詳細な内容は、判明次第、メールなどで連絡させるとよいでしょう。
なお、会場や日程の情報は、社長・上司・同僚が通夜や告別式に参列したり、供花・弔電を送ったりする際に使われたりします。親族のみで家族葬を行う予定がある、または故人の遺志で香典・供花・供物を辞退したいなどの事情がある場合には、その旨もメールに記載させる必要があります。
大事な家族・親族を亡くしたなかで必要な情報を確実に収集するためには、申請および報告内容のテンプレートを以下のように準備し、そこに記入させる形をとるとよいでしょう。
【件名】忌引き休暇取得のご連絡
◯◯課長
お疲れ様です。○○(氏名)です。このたび、○月○日に実母が逝去いたしました。急なご連絡で大変恐縮ですが、以下の日程で忌引き休暇を取得させていただきたいです。
【忌引き休暇の期間】
◯年◯月〇日(曜日)~◯月◯日(曜日)までの5日間
【通夜・告別式の日程】
通夜:◯月◯日(曜日)の午後◯時より
告別式:◯月◯日(曜日)の午前◯時より
【通夜と告別式の会場】
◯◯◯斎場(〒××-××××)◯◯県◯◯市◯◯町××-××
【休暇中の緊急連絡先】
××-××××-××××(本人の携帯電話)
なお今回は、実母◯◯の意向により、家族葬にて執り行う予定です。つきましては、香典・供花・供物などは辞退させていただきます。
担当業務に関しては、可能な範囲でAさんに状況を共有しました。未対応分は復帰後に確認します。訪問予定のすべてのお取引先にも、連絡を済ませております。ご不便をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。
忌引き休暇の取得では、業務への支障を最小限にするための引き継ぎも非常に重要です。
具体的な引き継ぎ内容は担当業務や業種ごとに異なりますが、休暇中に以下のような状況が起こり得る可能性がある場合は、それに対して行うべき対応などを上司や同僚に引き継がせる必要があるでしょう。
●昨日の問い合わせ内容に未回答のものがある⇒詳細はCRMに登録済みなので、先輩Aさんに対応してもらう
●業務システムの不具合を調査中だった⇒明後日より開発チームに確認してもらう(顧客への連絡は本人が行う)
●取引先とのオンライン会議予定があった⇒前任者でもあるB課長に出てもらう
など
忌引き休暇は年次有給休暇のように、日常的に取得するものではありません。このような特徴から、家族や親族が亡くなり実際に取得する際に、従業員側で手続きの流れや上司・同僚に配慮すべき事柄などが分からず、人事部門などに相談するケースが多く見受けられます。
人事担当者が適切な案内をするためには、従業員からの問い合わせに備えて、忌引き休暇の注意点やマナーを整理しておくことも大切です。
この章では以下の流れで、忌引き休暇を取得する従業員が注意すべきポイントや基本的なマナーを紹介します。
■就業規則を確認する
■会社から提出を求められる書類を確認する
■連絡・申請は早めに行う
■忌引き休暇を取得しない場合も会社へ連絡する
■休暇明けは関係者に必ず挨拶をする
■お返しの慣習を確認する
忌引き休暇は、年次有給休暇や公休とは異なり、各社が独自に制度として就業規則に規定しています。対象従業員は、就業規則に規定されたルールに従って申請を行い、休暇を取得する必要があります。
なお、忌引き休暇の場合、大事な家族・親族が亡くなった際に、従業員が就業規則を閲覧できる環境にいないケースもあります。このような場合には、第一報を受けた上司や人事労務の担当者が就業規則の内容を確認し、対象の従業員に以下の情報を教えるなどのフォローを行う必要があるでしょう。
●対象親族の範囲
●続柄ごとの取得可能日数
●起算日
●土日祝日の扱い
●給与支払いの有無
●必要書類
●特別規定(遠方での葬儀・喪主をつとめる場合 など)
会社から提出を求められる書類を確認します。
忌引き休暇を取得する際に必要な書類は、家族・親族が亡くなった事実を証明する書類です。
ただし、亡くなった事実を証明する書類には、センシティブな情報が含まれるものもあります。会社が提出を求める場合は、就業規則でその根拠を明確にしたうえで、葬儀案内や会葬礼状など、必要最小限の内容とするよう検討する必要があるでしょう。
忌引き休暇は、家族・親族の逝去に伴い急に発生するものです。また、故人が1親等の場合、多くは1週間前後の長い休暇になります。このような中で業務に支障をきたさないためには、忌引き休暇を取得することが決まった時点で早めの連絡を入れさせることが重要です。
家族・親族が逝去した時点では、もちろん今後のスケジュールが不明なこともあるでしょう。そのような場合でも、申請の連絡の際に分かっている範囲での情報共有を早く行わせるとよいでしょう。可能な範囲で口頭で補足させると、より丁寧な対応と言えます。
たとえば、公休前の金曜日や大型連休の前に不幸があった場合、忌引き休暇を使わずに済ませられることがあります。この場合、従業員が通夜や告別式に参列することが業務に影響をもたらすことはないかもしれません。
しかし、会社側として通夜や告別式に参列などをすることもあるため、家族・親族が亡くなったときには必ず上司に連絡を入れさせる必要があります。
忌引き休暇が終わったあとは、休暇中に代わりに担当の業務をサポートした上司・同僚・取引先などに対して、職場に戻ったことの報告と感謝の気持ちを伝えさせる必要があります。また、同僚に引き継いだ業務があれば、その進捗や対応状況の確認も必要でしょう。
香典返し等の慣習は、宗教・宗派の影響を受けるものです。一方で、香典を持参した上司や同僚などへの対応は、会社の慣習にしたがって行うのが一般的です。返礼の方法や時期について、不安や疑問のある従業員に対しては、人事部門からアドバイスを行ってもよいでしょう。
忌引き休暇は各企業が独自に制度設計を行い、導入できるため、人事担当者および従業員本人からの問い合わせがしばしば発生します。また、人事部門では、制度設計を進める中で「この場合はどのように定めればよいだろう?」といった迷いが生じやすい傾向もあります。
この章では、忌引き休暇に関するよくある質問とその回答を以下のとおり紹介します。
■土日の公休日も忌引き休暇の日数に含まれる?
■喪主や遠方での葬儀の場合、休暇を追加で取得できる?
■忌引き休暇中も業務連絡への対応は行うべき?
■大事なペットが亡くなった従業員向けの忌引き休暇は創設できる?
土日の公休日を忌引き休暇に含めるかどうかは、就業規則の定めによります。
忌引き休暇の日数が3日であれば、公休日を含めない規定の場合、土曜に不幸があった際には、土曜・日曜を除き月〜水の3勤務日を忌引きとします。
これも就業規則の定めによります。
たとえば、葬儀を行う実家が遠方の場合、移動だけで多くの時間を要する可能性があります。そこで従業員本人の心身の負担を減らすためには、就業規則で一定の要件を設けた上で、追加の休暇取得を認めることもあります。
また、会社が付与できる忌引き休暇の日数が少ない場合は、年次有給休暇と組み合わせた取得を許可してもよいでしょう。
忌引き休暇中は多くの場合、通夜や葬儀の準備や家族のサポートに多くの労力を使います。また、葬儀中は連絡を取るのが難しい場合も多いでしょう。
忌引き休暇を取得する本人の状況を考えると、休暇申請時に引き継ぎを行う前提で業務連絡はなるべく控えるのが理想です。どうしても本人とのコミュニケーションが必要な場合には、連絡がつきやすい時間帯を教えてもらうのも一つの方法です。
近年では「ペットも家族の一員である」という考え方が浸透したことで、ペット忌引き休暇を導入する企業も登場しています。ただし現状では、ペットを対象とする忌引き休暇の日数は「1日程度」が一般的です。
自社でペット忌引き休暇を創設する際には、他社の導入状況や社会情勢などを参考にしながらルール作りを行う必要があるでしょう。
忌引き休暇は、家族や親族を亡くした従業員が通夜や告別式に参列し、故人との別れを受け入れるうえで重要な休暇です。
忌引き休暇は会社が独自に設計できるため、この記事で紹介した一般的な対象範囲や日数を参考にしたうえで、不幸のあった従業員が利用しやすい制度にすることが重要です。
また、忌引き休暇は、数日間の休暇を急に取得することになります。したがって、休暇中の業務に支障をきたさないためには、休暇取得前に可能な限りの引き継ぎをすることの案内や、職場内で休暇を取得しやすい体制の構築なども行う必要があるでしょう。

安森 将
やすもり社会保険労務士事務所 代表
Professional AI Media編集部