育児や介護と仕事を両立するために、時短勤務制度を利用する従業員が増えています。一方でこれから時短勤務の制度を取り入れる企業では、制度の運用方法や手続きに悩むこともあるでしょう。
そこで今回は時短勤務制度の基本から設定方法のポイント、従業員のメリットや企業が抱える課題まで、詳しく解説します。

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無料でダウンロードする育児や介護と仕事を両立するために、時短勤務制度を利用する従業員が増えています。一方でこれから時短勤務の制度を取り入れる企業では、制度の運用方法や手続きに悩むこともあるでしょう。
そこで今回は時短勤務制度の基本から設定方法のポイント、従業員のメリットや企業が抱える課題まで、詳しく解説します。

目次
育児・介護休業法により、3歳未満の子の育児をする従業員に対して「短時間勤務(=時短勤務制度)」の措置を講じなければなりません。
育児・介護休業法第23条において、3歳未満の子の育児をする従業員の短時間勤務の措置を事業主(企業)に義務付けています。そして、2025(令和7)年4月の育児・介護休業法施行規則の改正により、育児のための時短勤務制度を設ける場合の「1日の所定労働時間を原則6時間」とすることが定められました。
以下では時短勤務制度の対象者や期間、給与の算出方法を確認していきましょう。
時短勤務制度の対象者は、育児を理由とする場合と介護を理由とする場合で異なります。
育児を理由とする場合、以下の条件をすべて満たす従業員が対象です。
- 3歳に満たない子を養育していること
- 1日の所定労働時間が6時間を超えていること
- 日々雇用される者(いわゆる「日雇い」の従業員)でないこと
- 時短勤務制度が適用される期間に育児休業(産後パパ育休を含む)を取得していないこと
なお、労使協定を締結している場合、以下のいずれかにあてはまる従業員は対象外となります。
- 継続雇用期間が1年未満
- 1週間の所定労働日数が2日以下
- 時短勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する従業員
時短勤務制度を講ずることが困難な場合の代替措置
事業主(企業)は、業務の性質上、時短勤務制度を適用することが困難な従業員に対して、時短勤務制度の代替措置として、以下のうち1つ以上の措置を講じなければなりません。
- 育児休業制度に準ずる措置
- フレックスタイム制
- 始・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ
- 保育施設の設置・運営等
- テレワーク等
上記のうち、テレワーク等については、2025(令和7)年の育児・介護休業法改正により追加されました。また、3歳未満の子の育児をする従業員がテレワーク等を選択できるようにすることが企業の努力義務とされています。
介護が理由の場合は、要介護状態にある対象家族を介護する従業員が対象です。
そのほか働き方改革の一環として、より多くの従業員を対象とした時短勤務制度を取り入れる企業も増えています。
育児を理由とする時短勤務制度は、育児・介護休業法では、3歳に満たない子を養育する期間が対象です。
なお、2025(令和7)年の育児・介護休業法改正により、3歳以降小学校就学前までの子を養育する従業員への「柔軟な働き方を実現するための措置」を講ずることが企業に新たに義務付けられています。5つの措置のうち2つ以上の措置が義務付けられていますが、5つの措置の一つに時短勤務制度が含まれているため、他の措置を講ずることができない場合には、時短勤務制度を導入しなければならないことになります。
企業によってはすでに独自に対象年齢を拡大し、小学校就学前まで、あるいは小学校卒業まで利用可能としているケースもあります。
介護を理由とする時短勤務制度は、利用開始から3年間で2回以上利用できます。連続して取得する必要はなく、状況に応じて複数回に分けて利用することも可能です。
なお企業は、法律で定められた最低基準を上回る制度を設けることができます。
時短勤務制度を利用すると勤務時間が短縮されるので、給与にも影響が生じます。時短勤務中の給与の算出方法は、以下の通りです。
時短勤務中の基本給は、原則として勤務時間に応じて減額されます。ノーワーク・ノーペイの原則が適用されるためです。時短勤務の場合の基本給は、以下の式で算出できます。
時短勤務時の基本給=通常勤務時の基本給(月額)×時短勤務時の1日の所定労働時間÷通常勤務時の1日の所定労働時間
例えば1日の所定労働時間が8時間で、月給30万円の従業員が、時短勤務により所定労働時間が6時間に短縮された場合、基本給は「30万円×6時間÷8時間=22.5万円」となります。
時短勤務中の場合、通常は残業を命じることはありませんが、仮に所定労働時間を超えて働かせた場合は、残業代を支払う必要があります。
例えば、6時間勤務の時短勤務者が7時間働いた場合、1時間分は所定外労働(法定労働時間内)です。この所定外労働時間(1時間)に対しては、通常の賃金を支払います。法定労働時間である8時間を超えない限り、割増賃金を支払う義務はありません。
時短勤務制度の趣旨は、育児や介護との両立を支援することです。対象の従業員に残業が発生する状況は制度の趣旨に反するため、業務の進め方の見直しや対象従業員への配慮が求められます。
また、小学校就学前までの子を養育する従業員、要介護状態の対象家族を介護する従業員が請求した場合には、企業は所定外労働(残業)を免除しなければならないことにも注意が必要です。
賞与については企業の就業規則や賃金規程などの定めによって、取り扱いが異なります。
一般的には基本給を基準として賞与を計算するため、時短勤務中の基本給(勤務時間)に応じて、賞与が減額されます。賞与が従業員の業績や貢献度に基づいて支給される場合には、フルタイム、時短勤務にかかわらず支給水準を判断する必要があります。その場合、時短勤務でも達成可能な目標を設定するなどの配慮をしたうえで、評価します。
一方で、時短勤務制度の利用そのものを理由に評価を下げることは不利益取扱いになるため、注意が必要です。
人材定着や働きやすい職場づくりの観点から、賞与制度を見直しましょう。
育児休業から復帰して3歳未満の子の養育のために時短勤務制度を利用する場合には、社会保険料の標準報酬月額を時短勤務時の実際の報酬に合わせて改定できる「育児休業等終了時改定」の制度があります。
通常、社会保険料の標準報酬月額は年1回(7月)の定時決定で見直されますが、この制度を利用すると、育児休業終了後に給与が標準報酬月額で1等級以上低下したときに企業が届け出ることで標準報酬月額を引き下げることが可能です。

時短勤務制度における所定労働時間を設定する際の注意点を3点紹介します。
時短勤務制度における所定労働時間は「1日6時間」が原則ですが、従業員の希望や業務の実態に応じて設定することも可能です。
7時間勤務や5時間勤務など、従業員のニーズに合わせた柔軟な勤務時間の選択肢を用意する企業もあります。複数の選択肢を用意することで、より多くの従業員が制度を利用しやすくなるでしょう。
もともと1日の所定労働時間が6時間以下のパートタイム労働者などは、時短勤務制度の対象外です。所定労働時間が短いため、さらに勤務時間を短縮する義務はありません。
ただし企業が独自に、さらなる所定労働時間の短縮や柔軟な勤務形態を認めることは可能です。従業員の状況に応じて、個別に対応を検討してください。
時短勤務中の休憩時間は、所定労働時間とのバランスを考慮することが重要です。労働基準法では労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を与えなければならないことが定められています。
1日の所定労働時間が6時間の場合、法律上は休憩を与える義務はありませんが、実務上は30分から45分程度の休憩を設けることが一般的です。従業員の健康や業務効率を考慮し、適切な休憩時間を設定しましょう。
また時短勤務制度に限ったことではありませんが、休憩時間は自由に利用できるものでなければなりません。労働から完全に離れ、自由に利用できる時間として確保する必要があります。休憩時間中に電話番や来客対応を求めることは、原則として認められません。
さらに1歳に満たない子の育児をしている女性従業員は、労働基準法67条により、育児時間(1日2回、各30分以上)を休憩時間とは別に請求することができます。生後1年未満の子を育てる女性の従業員が請求した場合、必ずこの育児時間を設定してください。
従業員にとってメリットの多い時短勤務制度ですが、企業にとっては課題もあります。ここでは従業員にとってのメリットと、企業の課題解決のためのポイントをまとめました。
時短勤務制度は優秀な人材の離職防止につながります。出産や育児、介護を理由に退職せざるを得ない状況を防ぎ、継続して働ける環境整備ができるからです。
採用や育成には多大なコストがかかります。時短勤務制度によって人材が定着すれば、新たな採用コストを削減でき、経験やノウハウの蓄積も継続できるでしょう。
また子育て世代の従業員の就業継続支援としても効果的です。仕事と育児の両立を支援することで、キャリアを継続しやすくなります。
時短勤務制度が充実している企業は、求職者にとって魅力的に映ります。特に子育てを控えた若い求職者や、将来的に介護との両立を考えている求職者にとって、この制度の有無は重要な判断材料です。
採用サイトや求人票で時短勤務制度の利用実績や柔軟な働き方の事例を紹介することで、働きやすい企業としてのブランディングにもつながります。人材獲得競争が激化する中、差別化要素としても有益な項目です。
時短勤務制度があることで、従業員は会社に対する信頼感や帰属意識が高まります。「会社が自分のライフステージを尊重してくれている」と感じ、エンゲージメントの向上につながるからです。
エンゲージメントの高い従業員は、生産性が高く、組織への貢献意欲も強い傾向があります。時短勤務であるため、限られた時間の中で効率的に成果を出そうとする意識も生まれやすくなり、組織全体の業務効率や生産性の向上も期待できるでしょう。
時短勤務者が増えると、人員配置や業務分担の調整が複雑になります。フルタイム勤務者と時短勤務者が混在する中で、業務の公平な配分や、時短勤務者が不在の時間帯のカバー体制にも配慮が必要です。
特にチーム単位で業務を進める職場では、時短勤務者の退勤後に緊急対応が必要になった場合の対処方法をあらかじめ決めておく必要があります。業務の属人化を防ぎ、チーム全体で対応できる体制を整えておきましょう。
時短勤務による給与の減額をどの程度にするか、評価制度にどのように反映させるかは、多くの企業が悩むポイントです。所定労働時間に合わせて給与を減額するのが基本ですが、賞与や昇給、昇格にどのように影響させるかについては慎重に検討しましょう。
時短勤務だけを理由に評価を下げることは、従業員の不利益になる不当な取り扱いです。一方でフルタイム勤務者との公平性も考慮しなければなりません。
明確な評価基準を設け、従業員に説明できる制度設計が求められます。
時短勤務者の業務を他の従業員がカバーする場合、負担が偏らないよう配慮が必要です。特定の従業員に過度な負担がかかると、不公平感や不満が生まれ、職場の雰囲気が悪化する可能性があります。
業務の見直しや効率化、必要に応じて増員やアウトソーシングの活用など、組織全体で時短勤務者を支える体制を作ることが重要です。
また時短勤務制度は育児や介護が必要な人だけでなく、将来的には誰もが利用する可能性がある制度であることを、全従業員に理解してもらいましょう。
時短勤務中の状況によっては、従業員から「6時間勤務を7時間勤務に変更したい」といった要望が出るかもしれません。ここでは時短勤務の所定労働時間の変更方法を解説します。
時短勤務制度を導入・変更するには、就業規則に制度の内容を明記する必要があります。対象者や利用期間、所定労働時間とその種類、申請方法、給与の取り扱いなどを具体的に規定してください。
なお、就業規則の作成または変更の際には従業員の過半数代表(または過半数労働組合)の意見を聴取したうえで、労働基準監督署への届出も必要です。また、就業規則の内容を従業員に周知し、利用しやすい環境を整えることも重要です。
また就業規則には、複数の勤務時間のパターンを規定しておくと、従業員の多様なニーズに対応できます。例えば5時間、6時間、7時間、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げなど、あらかじめ選択肢を増やすことで、利便性が高まります。
時短勤務制度とフレックスタイム制を組み合わせることで、さらに柔軟な働き方が可能になります。フレックスタイム制は一定の期間における総労働時間を定め、その範囲内で始業・終業時刻を従業員が自由に決められる制度です。
時短勤務者がフレックスタイム制を利用できるようにすれば、保育園の送迎時間に合わせて始業・終業時刻を調整するなど、より柔軟な対応ができます。コアタイムを設定する場合でも、時短勤務者の実態に合わせた設定を検討しましょう。
なおフレックスタイム制の導入には、就業規則等への規定と労使協定の締結、清算期間(上記の「一定の期間」)が1か月を超える場合は労使協定の労働基準監督署への届出が必要です。
時短勤務制度は従業員が必要とする場合に、1日6時間を原則として勤務時間を短縮する措置です。育児や介護と仕事の両立を支援します。時短勤務中の給与は勤務時間に応じて減額されますが、企業が独自の規定を設けることで、より使いやすい制度に設計することも可能です。
企業にとっては離職防止や採用競争力の強化、エンゲージメント向上といったメリットがある一方、人員配置の難しさや給与制度との整合性、他従業員との間の公平性といった課題もあります。
フレックスタイム制との組み合わせなど、柔軟な制度設計により、従業員が利用しやすく、企業も運用しやすい仕組みを構築しましょう。
時短勤務制度の充実は、人材定着と働きやすい職場づくりの重要な柱となります。時代のニーズにあわせて、より働きやすい職場環境の整備を進めてください。

安森 将
やすもり社会保険労務士事務所 代表
Professional AI Media編集部