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深夜手当とは?企業が押さえるべき割増率・計算方法・制度設計上の注意点を解説

深夜手当とは?企業が押さえるべき割増率・計算方法・制度設計上の注意点を解説
この記事を読んでわかること
  • 深夜手当の法的根拠と対象となる時間帯・割増率

  • 時間外手当・休日手当との違いと、重複した場合の計算方法

  • 固定残業代制度や年俸制での深夜手当の扱い方

  • 雇用形態・勤務形態別の取扱いと、深夜労働が制限される労働者

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深夜手当は、労働基準法に基づく割増賃金の1つであり、企業にとっては「支払うかどうかを選べる手当」ではなく、法律の定めに基づき適正に支払わなければならない手当です。

シフト制や交替制勤務を採用している企業では、深夜労働の発生頻度が高く、計算誤りや制度設計の不備が未払いリスクにつながる可能性があります。

また、深夜手当は時間外手当や休日手当と同時に支払うことがあり、固定残業代制度や年俸制との関係も含めて、実務上の判断が複雑になりやすい分野です。

本記事では、企業側の視点から、深夜手当の法的根拠、割増率、計算方法、制度設計上の注意点、リスク管理まで詳しく解説します。

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目次

深夜手当とは

深夜手当とは、午後10時から午前5時までの時間帯に勤務した場合に支払われる割増賃金のことです。労働基準法に定められており、通常の賃金に一定の割合(割増率)を上乗せして支払うことが義務付けられています。

重要なことは、「残業をしたかどうか」ではなく、「どの時間帯に働いたか」が基準になる点です。たとえ所定労働時間内の勤務であっても、その時間が午後10時から翌日の午前5時の間であれば、深夜手当の支払い対象です。以下では深夜時間帯の範囲と支払義務の根拠について詳しく見ていきましょう。

深夜時間帯の範囲

原則として、深夜時間帯は午後10時から翌日の午前5時までの間とされています。この時間帯に1分でも勤務した場合は、深夜手当の対象です。

ただし、厚生労働大臣が特定の地域や期間について必要と認めた場合、午後11時から午前6時までに変更される例外もあります。

支払い義務の根拠

深夜手当は、企業が任意で決められる制度ではありません。労働基準法第37条第4項に基づく法定の割増賃金であり、これを支払わなければ6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

正社員だけでなく、アルバイト、パート、契約社員など、雇用形態を問わず適用されます。雇用契約書や就業規則などに「深夜手当を支給しない」と記載しても、その内容は無効です。

労働基準法第37条第4項

『使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。』

出典:e-GOV法令検索「労働基準法」

深夜手当と他の手当との違い

深夜手当は、時間外手当や休日手当、夜勤手当とたびたび混同されます。それぞれの要件や法的根拠が異なるため、正しく区別することが重要です。ここでは、深夜手当と他の手当との違いについて解説します。

深夜手当と時間外手当の違い

時間外手当は、法定労働時間である「1日8時間」「1週40時間」を超えて働いた場合に支払われる割増賃金です。基準は「労働時間の長さ」です。

一方、深夜手当は「働いた時間帯」によって発生します。たとえば、午後7時から11時まで働いた場合、午後10時から11時の1時間は深夜手当の対象です。仮にその日が所定労働時間内の勤務であっても、深夜時間帯に勤務した場合には、その時間について深夜手当の支払いが必要です。

深夜手当と休日手当の違い

休日手当は、法定休日に働いた場合に支払われる割増賃金です。基準は「法定休日かどうか」です。

法定休日の午後10時以降に働いた場合は、休日手当と深夜手当が重なります。この場合、両方の手当の割増率が重複して適用されるため、通常の深夜手当より高い手当を支給します。

深夜手当と夜勤手当の違い

夜勤手当は、企業が独自に設定する手当です。交替制勤務の負担や夜勤そのものへの対価として支給されるケースが多く、法律上の支払い義務はありません。

一方、深夜手当は労働基準法により支払いが義務付けられた割増賃金です。夜勤手当が支給されていても、それとは別に深夜時間帯に働いた場合、その時間に対しては深夜手当を支払う必要があります。

深夜手当の割増率

深夜手当の金額は、割増率によって決まります。ここでは、基本の割増率と、時間外労働や休日労働と重なった場合の考え方について解説します。

基本の割増率

深夜手当の割増率は、通常の労働時間の賃金の25%以上です。企業が独自にこれを下回る設定をすることはできません。

たとえば、時給1,200円の場合、深夜時間帯の時給は1,500円以上(このうち深夜手当にあたるのは「300円以上」)です。

時間外労働と重なる場合

深夜時間帯に残業をした場合、時間外(残業)手当の割増率と深夜手当の割増率が同時に適用されます。時間外手当の割増率は25%以上、深夜手当の割増率も25%以上のため、合計で50%以上の割増率です。

つまり、通常の労働時間の賃金の1.5倍以上の支払いが必要です。

休日労働と重なる場合

法定休日に深夜労働をした場合は、休日手当の割増率(35%以上)と深夜手当の割増率(25%以上)が同時に適用されます。したがって合計で60%以上の割増率です。

通常の労働時間の賃金の1.6倍以上の支払いが必要となるため、企業としては正確な計算が求められます。

月60時間超の時間外労働との関係

時間外労働が月60時間を超えた場合、超過した労働時間に対しては50%以上の割増率が適用されます。そしてこの時間が深夜時間帯にあたる場合は、さらに深夜手当の割増率(25%以上)の加算が必要です。

結果として、通常の労働時間の賃金の75%以上の割増率となります。

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深夜手当の計算方法

深夜手当は、仕組み自体はシンプルですが、実際の給与計算では「基礎賃金の範囲」「深夜時間の区分」「割増の重複」などで誤りが起こりやすい項目です。ここでは、基本的な計算の流れと注意点について解説します。

1時間あたりの基礎賃金の算出方法

時給制の場合は、契約上の時給をそのまま基礎賃金として用います。

月給制の場合は、まず1時間あたりの賃金を算出する必要があります。計算方法は下記のとおりです。

  • 1時間あたりの賃金=月給÷月平均所定労働時間

  • 月平均所定労働時間は、(365日−年間休日数)×1日の所定労働時間 ÷ 12で求めます。

なお、この「月給」には家族手当、通勤手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金などは含めないのが原則です。ここを誤ると、深夜手当の額も変わってしまいます。

深夜労働時間の算出方法

次に、午後10時から翌日午前5時までの労働時間を勤怠記録から正確に抽出します。休憩時間は労働時間に含めません。

この際、法定労働時間を超えているかどうか、法定休日にあたるかどうかも同時に確認します。

たとえば、午後6時から翌日の午前3時まで勤務し、午後8時から9時まで1時間の休憩を取った場合、午後10時から翌日午前3時までの5時間が深夜労働時間です。

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計算式と算出例

深夜手当の基本的な計算式は、下記のとおりです。

  • 深夜手当=1時間あたりの賃金×0.25(以上)×深夜労働時間

たとえば、時給1,200円で深夜時間帯(所定労働時間内)に4時間勤務した場合の深夜手当は1,200円×0.25×4時間=1,200円です。(割増率25%の場合)

時間外労働と深夜労働が重なる場合は、1時間あたりの賃金×1.50×該当時間で計算します。

端数処理のルール

1円未満の端数は、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げるのが一般的です。

深夜労働時間についても、1か月の合計時間数について30分未満切り捨て、30分以上切り上げなど、企業ごとに規程が定められている場合があります。ただし、労働者に不利にならないように運用する必要があります。

深夜手当の計算で見落としやすいポイント

深夜手当は「午後10時~翌日午前5時」の勤務に対して25%以上の割増を行う手当ですが、実際の給与計算では時間外労働や休日労働との重複、固定残業代制度との関係など、判断を誤りやすい場面が多くあります。

ここでは、深夜手当の計算で実務上の注意点を解説します。

所定労働時間が深夜帯に含まれるケース

所定労働時間そのものが深夜時間帯にかかっている場合でも、午後10時~翌日午前5時に該当する労働時間に対しては25%以上の割増率で深夜手当を支払う必要があります。残業時間であるかどうかは関係ありません。

さらに、法定労働時間(1日8時間)を超えた時間外労働時間に対しては時間外労働に対する割増賃金(25%以上)が加算されます。従って、深夜時間帯かつ時間外労働に該当する労働時間に対しては、合計で50%以上の割増賃金を支払う必要があります。

具体例を見ていきましょう。

  • 所定労働時間:午後4時~翌日午前1時(休憩を除く労働時間8時間)

  • 実労働時間:午後4時~翌日午前4時

  • 時給:1,350円

  • 深夜時間帯で休憩1時間(午後11時~12時)取得

  • 割増賃金率:時間外労働、深夜労働ともに25%

この例における深夜手当(時間外手当を含む)の計算方法は次のとおりです。

①午後4時~10時(所定労働時間内・深夜時間帯外)6時間(深夜手当の支給はなし。)

②午後10時~翌日午前1時(所定労働時間内・深夜時間帯内)

※この時間帯で休憩1時間を取得しているため、これを差し引いた労働時間は2時間

1,350円×0.25×2時間=675円(深夜手当支給額)

③翌1:00~翌4:00(法定・所定労働時間外かつ深夜時間帯内)3時間

1,350円×1.50×3時間=6,075円(時間外手当・深夜手当合計支給額)

深夜手当(時間外手当を含む)の合計支給額:6,750円

このように、時間帯ごとに区分して計算することが重要です。

休日労働と深夜労働が重なるケース

法定休日に働いた場合は35%以上の割増率の休日手当の支払いが必要です。さらにその時間が深夜時間帯に該当する場合は、深夜手当として25%以上の割増率が加算されます。

つまり、休日労働かつ深夜労働の場合は60%以上の割増率になります。

具体例を見ていきましょう。

  • 通常時間帯の賃金:時給1,150円

  • 法定休日の23:00~翌1:00に2時間勤務

  • 割増賃金率:休日労働35%、深夜労働25%

上記の場合の休日手当+深夜手当の計算方法は次のとおりです。

  • 1,150円×1.60×2時間=3,680円

1時間あたり1,840円となり、通常より690円高くなります。

ここで注意すべきなのは「法定休日に働いた場合」である点です。所定休日とは区別して判断する必要があります。

固定残業代制度を導入しているケース

固定残業代制度では、あらかじめ一定時間分の時間外・休日・深夜労働に関する割増賃金をまとめて支給することがあります。ただし、次の点を満たしていなければなりません。

深夜労働に関する割増賃金が含まれていることが明示されているか

就業規則や雇用契約書に、「何時間分の深夜労働の割増賃金を含むか」が具体的に記載されている必要があります。内訳が曖昧な場合、深夜手当を別途支払う義務が発生しかねません。

固定残業代に含まれる深夜労働時間を超えた場合の追加支払い

固定残業代に含まれる深夜労働時間を超えた場合は、超過分について別途割増賃金の支払が発生します。固定残業代の額を上限とすることはできません。

勤務実態との整合性確認の重要性

実際の深夜労働時間が固定残業代に含まれる深夜労働時間を恒常的に超えている場合、制度設計自体が問題と判断される可能性があります。勤怠実績と制度内容の整合性を定期的に確認することが重要です。

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深夜手当における雇用形態別の取扱い

深夜手当は雇用形態にかかわらず適用されます。ただし、給与体系によって計算方法や確認すべき点が異なります。

正社員の場合

月給制であっても、深夜時間帯の労働については深夜手当として別途割増賃金の計算が必要です。

企業の担当者としては、給与明細に「深夜手当」や「深夜割増」として明示しているかを確認し、労働者に対して適切に説明できる状態にしておくことが重要です。

アルバイト・パートの場合

時給制が多く、通常は時給に25%以上を上乗せした金額が支払われます。

たとえば、深夜時間帯以外の時給が1,000円であれば、深夜時間帯の時給を25%以上の深夜手当相当分を割り増す形で1,250円以上として設定しています。雇用形態を理由に割増率を下げることはできません。

年俸制の場合

年俸制でも、深夜手当の支払い義務はあります。前述のように通常の労働時間と明確に区分できる形で雇用契約書等に深夜手当を含むことが明示されているかが重要です。

明示がなければ、別途支払う必要があります。

固定残業代制の場合

固定残業代制度では、あらかじめ一定時間分の時間外手当をまとめて支給します。

その中に深夜手当分を含める場合には、就業規則や雇用契約書に明確に記載されている必要があります。記載が不十分な場合は、深夜手当を別途支払わなければなりません。

深夜手当における勤務形態別の取扱い

勤務制度によっては、深夜手当の計算が複雑になる場合があります。制度ごとの基本的な考え方を押さえておきましょう。

所定労働時間が深夜時間帯にかかる場合には、所定労働時間内であっても深夜手当が発生します。

たとえば、午後5時から翌日午前2時までが所定労働時間であっても、午後10時から翌日午前2時までの4時間は深夜手当の支給対象です。

変形労働時間制の場合

変形労働時間制により、1日8時間を超える所定労働時間が設定されている場合でも、そのうち深夜時間帯に該当する労働時間については深夜手当の支給対象です。

変形労働時間制は時間外労働の判断に影響しますが、深夜手当の適用には影響しません。

フレックスタイム制の場合

清算期間内で総労働時間を調整する制度であっても、深夜手当の支払いは必要です。

フレックスタイム制で自ら選択した勤務時間であっても、午後10時以降の勤務には深夜手当が発生します。

みなし労働時間制の場合

裁量労働制などのみなし労働時間制であっても、実際に深夜時間帯に働いた場合は深夜手当の支払い義務があります。

みなし労働時間制は労働時間の算定方法を簡略化する制度ですが、深夜手当を免除する制度ではありません。

深夜労働が制限される労働者

深夜手当は原則としてすべての労働者に適用されますが、そもそも深夜労働自体が制限または禁止されている労働者もいます。企業側は割増率だけでなく、「深夜に働かせてよいかどうか」も確認しなければなりません。

18歳未満の労働者

原則として、18歳未満の年少者を午後10時から午前5時までの深夜時間帯に働かせることはできません。これは、労働基準法第61条による成長期にある若年労働者の健康を守るための規定です。

例外として、交替制勤務に従事する16歳以上の男性など、一定の条件下で認められるケースもありますが、実務上は厳格に制限されています。アルバイトであっても適用されるため、注意が必要です。

妊産婦

労働基準法第66条第3項により、妊娠中および出産後1年以内の女性労働者が請求した場合、企業は深夜労働を命じることができません。

この権利は労働者本人が会社に請求することによって行使されます。請求があった場合、企業は勤務時間の変更など、適切な措置を取る必要があります。

育児・介護中の労働者

小学校就学前の子どもを養育する労働者や、要介護状態の家族を介護する労働者は、一定の条件を満たす場合、深夜労働の免除を請求できます。

企業はこれを拒否できません。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合など、限定的な例外もあります。制度の詳細は育児・介護休業法に基づき定められています。

管理監督者の深夜手当

「管理職は残業代が支給されない」という認識から、深夜手当も支給されないと誤解されることがあります。しかし、深夜手当については残業代(時間外手当)とは扱いが異なります。

管理監督者とは、経営者と一体的な立場にあり、労働基準法の労働時間や休憩、休日の規定が適用されない者を指します。役職名だけでは判断されず、職務内容、権限、待遇などを総合的に見て判断されます。

単に「課長」「部長」という肩書きがあるだけでは、労働基準法上の管理監督者に該当するとは限りません。

管理監督者には、時間外手当や休日手当が支払われませんが、深夜手当については支払い義務があります。

これは、労働基準法上、深夜労働の割増賃金の支払いが適用除外の対象に含まれていないためです。したがって、管理監督者が午後10時から翌日午前5時の間に働いた場合、深夜手当として25%以上の割増賃金を支払う必要があります。

まとめ

深夜手当は、午後10時から翌日午前5時までの勤務(深夜労働)に対して支払う必要がある25%以上の割増賃金です。時間外労働や休日労働と重なれば割増率はさらに上昇します。この計算を誤れば未払い賃金となり、法的リスクを抱えます。

下記の要点を押さえましょう。

  • 割増賃金の基礎となる賃金の算定範囲を正しく定めること

  • 深夜時間帯の区分管理を正確に行うこと

  • 固定残業代や年俸制などの場合に深夜手当相当分を含める場合は就業規則などに明確に規定すること

  • 管理監督者の扱いを誤らないこと

  • 深夜労働が制限される労働者への配慮を徹底すること

就業規則や賃金規程の定期的な見直し、勤怠管理システムの整備、社内教育の徹底を通じて、法令遵守とリスク回避の両立を図ることが、健全な企業運営につながります。

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安森 将
監修

安森 将

やすもり社会保険労務士事務所 代表

大学卒業後、大手鉄道会社の総合職として 25 年間、主に人事、営業戦略、新幹線予約システム開発業務に携わった後、退職。退職後は社会保険労務士、行政書士などの国家試験に合格し、2023 年に社会保険労務士として開業(現職)。企業勤務時代の経験を活かし、人事労務分野を中心とした会社経営に関する様々な相談業務、働き方改革推進支援センター(厚生労働省委託事業)の専門家、臨時労働保険指導員(東京労働局)としての業務等に従事。大手企業各社オウンドメディア等の人事労務に関する記事執筆や監修の実績も多数。
Professional AI Media編集部
執筆

Professional AI Media編集部

株式会社On Technologiesが運営する「AIによる業務変革と成長を支援する Professional AI Media」を編集しています。

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